Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Let's look at the new world ! : 09

 

「やっほーヴィンくん」
煮詰まった仕事を少しだけ放って敷地内の芝生の上で寝転がっていれば、暖かな日差しを遮る人影に声を投げられる。それは先日「そろそろ旅にでようと思う」と言ったきり音沙汰のなかった日本からの旅人で。彼女の声に上体を起こして「同い年でしょ、くん、はいらないって」と返す。「旅にでたんじゃなかったの?」と重ねながら。
「うん、旅してきたよ。バルセロナ二泊三日」
そう言って彼女はボクの隣に腰を下ろして「ハイ、お土産」と世界的に売られている棒付きキャンディを数本渡してくる。
「お土産って、コレは流石に適当すぎない?」
「じゃぁおやつって事で」
そう言って彼女も同じキャンディの包み紙を開けて1本くわえる。流石にこの芝生の上じゃタバコは吸えないし、口寂しかったボクも彼女に倣い渡されたものの中から1本を選んで口に運ぶ。甘ったるいコーラの味が口に広がっていく。
「旅にでるって言うからいろいろ回るのかと思った」
「何となくね。ヴィンとかセナくんとも話したくなって?」
まー、またすぐどっか行く予定だけど。と言葉を重ねながら彼女は芝生にごろんと身を投げる。
適当に、自然に生きているような彼女がなんだかおかしくなってボクは笑う。
「じゃぁ今夜はウチで夕飯食べていきなよ。シュンメには伝えとくし」
携帯を取り出しながらそう告げれば「そうしようかなー」と、最初に会った時に無理矢理連れられてきた事なんて遠い昔のように自然なトーンで彼女は答える。何だか捨て猫を餌付けしたみたいだな、なんて思って。シュンメもあの頃のボクをそう思っていたのかもしれない。なんてシュンメと出会った頃の事を思い出しながら、シュンメへとメッセージを送る。今夜の夕飯はリツも居るよ。と。
「次はどこに行くつもりなの?」
そんなメッセージを送りながら、話を彼女の旅の話題へと変えれば「んー」なんて少し考える様子を見せてから「パリ、かなー」とつぶやくように答えるのだ。
「パリね、それならボクにツテがあるからガイドでも頼んじゃう?」
自分が旅する訳でもないのに、何だか楽しくなってきたボクは彼女にそう告げる。
「ツテってどんな」訝しげな視線を送る彼女に「トキのイトコの息子。今パリで学生してるって言ってたし、日本人だから日本語もバッチリ」
「あー、雨宮さんの。ジューセーってヤツだ」
ジューセー、と言った彼女の単語をボクは漢字に当てはめれなかったけれど、きっとシオンの事であろう。「日程教えてくれれば連絡するからいつでも言って」と重ねる。
そんな話をしていれば、震える携帯。
「シュンメから。1時間後にアルディで。って」
場所わかる?と訪ねれば、彼女は肯定の意味で首を縦に振る。
「それじゃ、待たせないように行っとくかな」
そう言って彼女は芝生から体を起こして立ち上がる。
「じゃー、また後でね」
そう声をかければ、彼女もまた「ん、後で」と返すのだ。

今日は早く帰らないとならない。ボクもサボタージュから仕事場へと戻るため、離れがたい芝生の上から身体を起こし、白亜の建物へと足を向けた。

 

 

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バルセロナだからとチュッパチャプスをお土産にする笹野は流石に適当過ぎると思う。

 

 

| 20:59 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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