Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Let's look at the new world ! : 07

 

「紹介するよ、彼がさっき話した同居人のヴィンツェンツ・フェルマー。ヴィン、彼女はさっき知り合ったササノリツカ。ヴィンと同い年でサトシさんの姪っ子でサトシさんの家を拠点に放浪の旅の最中だって」
私とえらく整った顔の青年の間に立ったセナくんはそう言って彼と私を引き会わせた。セナくんと二人で科学館を堪能していたら、どこからか彼が駆け寄ってきたのだ。日本で数年暮らしていたという前情報は聞いていたけれど、何の躊躇いもなくすべて日本語で話し出すセナくんに心の中でだけ「あ、本当に日本語大丈夫なのか」なんて呟く。
西洋の人形のように整った造形に、着るものに頓着しないのか、少し草臥れたTシャツの上に皺のついた白衣。ジーンズを履いた足下に至っては素足にサンダル。さして身長も変わらなさそうな金髪碧眼の青年は私が今までに出会った二大イケメンである幼なじみやヤリチン野郎とはまた違う部類の美形だった。というか、あれと比べたら罰が当たりそうな美形か。宗教画に出てくる可愛らしい赤ん坊のような天使とか従えてそう。頭の中で鳴り響くチャペルの鐘の音から私を現実に引き戻したのは「え、固まる?」というセナくんの声と、目の前で片手を出しながら首を傾げるヴィンと呼ばれた美形くんの「どうしたの?」という日本語。うわー、美形は声まで良い声してやがる。
「あ、うん。えらい美形が出てきて現実逃避してた。笹野です。ササノでもリツカでも好きに呼んでいただければ」
率直に事実を述べて差し出された手を握れば、「ボクもヴィンで良いよ。リツ」と言って笑う。少女マンガだったら画面に花が咲き乱れそうなそんな笑顔を向けられて、私は心の中で「なにこれ現実?」と呟いていた。
「現実現実」
「現実だねー」
口から出ていたらしい。

 

「ていうか、ヴィンお前俺が来てるってよくわかったな」
思い出したかのようにセナくんがヴィンくんに問いかける。その問いに彼は弾けるような笑顔を浮かべて「気分転換に科学館の監視カメラハッキングしてたら丁度シュンメが居て。隣に連れてたの、ユーちゃんかなーって思って来てみたんだよね」
「あー、成る程。確かに雰囲気似てるかもな。っていうか、何年前の話だよソレ。」
「何年前だろ、7、8年前くらい?」
「そうかもなぁ。ホントよく覚えてるな」
「記憶力には自信があるし、ミズハラがメールでユーちゃんが異動で戻ってきたって言ってたから旅行にでも来たのかなって」
彼らの会話に何点か引っかかりを感じて、私は恐る恐る口を開く。笑顔で答えていたハッキング、の単語は突っ込めなかったけれど、「もしかして、ユーちゃんって、瑞原由宇?」だけは絞り出す。つい半年ほど前まで同じ職場で働いていた後輩の名を出せば、二人は驚いたように私を見る。
「え、ユーちゃんの事知ってるの?」
「リツカって一体何者?」
口々にそう問いかける彼らに「いや、会社の元後輩デスケド……」としか返すことが出来ず、そういえば、と携帯の画像フォルダを漁って山崎から送られてきていた送別会の写真を引っ張り出す。
「この瑞原が二人の思ってる瑞原由宇なら、だけど……」
そうして見せた画像を二人はまじまじと見つめ「Genau!!」と声を上げる。
「マジでユウだ。うわースーツが板に付いてる社会人だな」
「絶対シュンメよりスーツ似合うって」
「うるせ、俺は作業着が似合ってればいーの。それにしても面影あるけど格好よくなっちゃってまぁ」
「セーラー服も似合ってたけど、パンツスーツもまたいいね」
私の手から離れた携帯は二人の手の元へと移動して、彼らは私をおいてやいのやいのと盛り上がる。そこで浮かぶ一つの疑問。
「お二人は瑞原とどういう関係……?」
私の知る瑞原と彼ら二人にどうしても接点が見いだせなくて、思わず探るように問う。それを問えば、二人は顔を見合わせて少し悩んだ後に「友達?」と答えるのだ。
「簡単に説明するの難しいな……あ、じゃぁ今夜ウチで夕飯食っていきなよ。トキも呼んで」
「それが良いよ!サトシにはボクから言っとくし。トキにも!」
「そうしよう。リツカ、買い物付き合ってくれるよな?好きなもん作ってやるよ」
「え、ちょ」
「そうしなよ!シュンメの料理おいしいし、ユーちゃんの話聞きたいし」
「あっはい」
完全に二人のペースに飲み込まれた私はイエスかはいの答えしか残されていなかった。
そうして私はテンションが上がり切ったセナくんに腕を引かれて科学館を後にすることになったのだ。

 

 

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セナヴィンWith笹野。振り回される笹野というのはまた新鮮。

 

 

| 00:00 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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