Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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路上へ急襲。

 
出張で来た都会のビジネスホテルの一室に入り、一息つきながらもタバコに火を灯し煙を肺へと吸い込む。
ふぅ、と煙を吐き出しながら、自分の携帯からインターネットにアクセスする。毎回検索するのが面倒臭くなってブックマークに登録したとあるツイッターアカウントを選択し、そのツイートをチェックする。

「今夜路上してます」

その一言と、場所と時間を確認し、自分の位置と今の時間を確かめる。
今からなら、間に合うか。
タバコを灰皿に押し付けて、一日着ていて少し草臥れたスーツを着替える事もせず、社員証だけ部屋のロッカーに仕舞い込めば、俺はホテルに入った時と同じ格好でその部屋の扉を開けた。


「よぉ」
ギターを爪弾く男の歌が終わり、彼の周りに疎らにいた人々が各々の向かうべき場所に行ったところで俺は彼の前に立ってそう声を掛ける。そうしてやれば、彼は目を見開いて叫ぶのだ。
「宇宙さん!?」

俺が声を掛ける前に歌ってた歌で元々店仕舞いをする予定だったらしい彼は、ギターをケースに片付けながら「何で宇宙さんがここに?」と疑問を投げる。
「出張。本社がこっちだからたまにな。ンで、ハジメのツイッター見たら路上やるって書いてあったし、丁度行けそうな時間と場所だったし」
疑問に答えれば「え、宿泊地は?」と更に彼は疑問を重ねる。その問いには此処から電車でふた駅ほどある地名を答える。
折角だから、と駅前のファミレスに入り各々軽く食い物を注文すれば、お互い自然にタバコへと手が伸びる。

「でも、宇宙さん何で俺のツイッター知ってるの」
煙を吐きながら尋ねる彼に「え、前おじさんトコで根掘り葉掘りやられてたろ」と俺もまた煙と共に返す。
おじさん、というのは俺や彼の親の兄弟で。俺から見れば母親の弟、彼から見れば父親の双子の兄だ。確かあれはもう何年も前におじさんの所で俺や彼を含めるイトコが集まった時、彼がバンドをしているという話になったところで若い頃に音楽をやっていたおじさんにガッツリと食いつかれていたのだ。最初に話を振ったおじさんの娘である俺たちの従妹はそれを見てケラケラと笑っていた。
「え、あの頃からアカウント変えたんだけど」
「変える前に新しいバンドやるってバンド名アナウンスしてたろ。そこから辿ってな」
「相変わらず宇宙さんもりっちゃんも怖い……」
「リツは偶然のクリーンヒットだったみたいだけどな」
元々話を振った従妹であるリツは動画サイトでアーティスト新規開拓をしていたら偶然見つけたのだと言っていた。その事実確認におじさんが食いついて根掘り葉掘り訊かれる羽目になった彼は気の毒だったが、名前を変えずに本名でやってる方が悪い。ササノハジメで検索すれば出てくるし。笹野肇と書いて、ササノハジメ。それが8歳年下の従弟である彼の名前だ。
俺と彼とそれから俺から見たら一回り年下になる従妹のリツ。互いの親である3人姉弟はそれぞれ2人づつ子供がいるが、その従兄弟の中でも長子である俺たち3人は割とウマが合うのか、結構仲がいい。地元を出ていない俺やリツは互いに社会人になった今でも定期的に飲みに行っているし、ハジメともこうやって機会を見つけては顔を見に行く。俺の妹やハジメとリツの弟たちはそんなに交流は無いみたいだけども、6人で集まるとなれば断ることなく顔を見せに来る。ハジメの弟はこっちに出てきているから会える頻度は少ないが。
「そういえば、盆は帰ってくんのか?」
そんな事をかんがえていれば、ふと思う盆の予定。ここ数年盆は仕事で呪詛を吐き続けていたリツが今年は上司を殺してでも休みをもぎ取るとこの間叫んでいたのを思い出して、ハジメも帰ってくるなら久々に揃えるかと彼の予定を窺う。彼は少しだけ考える素振りを見せて「帰れないことは無いけど考え中なんだよな」との返答。
「なら帰って来いよな。今年はリツが上司を殺してでも休み取るって言ってたし。マモルにも声かけてさ、久々に皆揃って酒飲みたいし」
「あー、ソレ良いね。っていうか、りっちゃんは一体何やってんの」
「リツはなーまぁ社畜だよな」
「うわ、何となく想像がつく」
「それな」
「でも、盆に帰るならフェス行きたいかも。盆合わせでやってるよな」
思い出したようにハジメはそのフェスの名前を口にする。地元でやるアウトドア系の野外フェスだ。その名の通り日が昇るまで音楽が鳴り響くロックフェス。
「それも良いな。もうテントサイトは無いだろうけど、テント建てた所で歩き続ける訳だし」
「よし決まり。マモルには声掛けとくからりっちゃんの方宜しく」
「おうよ」
そう返したところで、店員が注文をした食い物と飲み物を持ってくる。ハジメはいそいそとドリンクバーから持ってきたコーラを、俺は店員が持ってきたビールを掲げ、軽くカチンと鳴らすのだ。

「久々の再会に乾杯?」
「宇宙さんの行動力に乾杯」

そうして俺たちは届いた食い物をつつきながら、とりとめもない話を続けるのだ。

 

 

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宇宙さんと肇さんのコンビが割と気に入っている。

そこに笹野が入って三人衆になるのも宜しい。

 

 

| 19:53 | 飲んで喚いて呑まれて飲んで。 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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