Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Let's look at the new world ! : 04
 
「なぁ」
久々に昔馴染3人で昼飯でも、と敷地内に作られた食堂で大量の肉と格闘していれば、テーブルを挟んだ向かい側で携帯を見つめながら俺ともう片方の昔馴染にポツリと言葉を漏らす男が1人。
「ん?」
「エルマー、どうしたんだ?」
声をかけられた俺達はそんな言葉を上げながら、彼に視線を投げる。
俺ではない片割れであるヴェルナーにエルマーと呼ばれた彼は「サトシからメッセージ届いてんだけど」
「久慈さん?」
俺がそう問えばエルマーは「ん」と首を縦に振り肯定する。
「で、どんなメッセージ?」
ヴェルナーが問えば、あー、ともうー、とも取れない言葉で唸りながら、その内容を口にし、「姪っ子に会う気無い?って来たんだがこの内容を俺はどう受ければ良いんだ?」と額に手をやり項垂れる。
「あー、そう言えば久慈さん姪っ子さんが遊びに来るってここ数日浮かれてたけど、今日だったんだな」
俺がそんな感想を抱けば、ヴェルナーは隣で笑い、向かいに座るエルマーは苦虫を噛み潰したような顔で俺にじとりと視線を投げる。
「気楽で良いよなお前は」
じっとりと低い声でそう吐き捨てるエルマーに「ヴェルナーは良いのか、となりでめちゃくちゃ笑ってるけど」と告げれば「ヴェルナーに口で勝てる気がしねぇから良いんだ」と返される。その回答にヴェルナーはさらに噴き出しプルプルと痙攣し出すのだ。
「酷いな」
そう呟いた俺の言葉に「爆発物持ってないお前は怖くないからな」としれっと答えられその回答が更にヴェルナーの腹筋を刺激したらしく、隣で聞こえる破裂音の後に彼は更なる痙攣を繰り返す。
「で、どうするんだ?」
痙攣する隣の席の男は放置し、向かいに座るエルマーへそう問いかける。
「そもそもこのメッセージをどう解釈すべきなのかという所から始めねぇと」

『姪っ子に会う気無い?』の解釈の問題である。勤め先の同僚と紹介するには研究者の久慈さんと、警備部に所属する存在が荒事専門みたいなエルマーというのは割とミスマッチである。友人にしてもまぁ年の差はあるだろう。好意的な解釈をすれば、折角の海外なのだから現地の人間と触れ合わせようという話だろうか。それであれば、久慈さんから聞かされていた姪っ子さんの情報から考えれば彼女と同い年という俺の弟の方が適任な気がする。エルマーは日本語についてほぼ出来ないが、弟であれば日本語も話せるし。そこで浮上するのは、久慈さんとエルマーの間柄である。
「まぁ、率直に考えれば家族にご紹介だよな」
そう、久慈さんとエルマーは恋愛的な意味でお付き合いをしている間柄であり、久慈さんと友人だとか同僚的な意味で付き合いのある俺らやヴィン辺りに声が掛かっていない以上、そういう事なのではないのか。と。
そう言ってやれば、奇妙な声と共にテーブルへと突っ伏せる。彼がテーブルに突っ伏している間に俺は食べきれない肉の山をそっと彼の皿の上に移す。普段使っていない食堂だが、流石に量が多すぎる。カフェオレだけで良かった。と心の中だけで後悔する。いい加減腹が苦しい。突っ伏すエルマーの手に握られた端末は再度ポンと軽快な音を鳴らし、メッセージの着信を知らせる。彼がのろのろとその中身を確認すれば怪訝な表情でその画面を凝視する。
「なぁ」
最初に掛けた声と同じ、いや、もう少しだけ低いトーンで呼び掛けるエルマーに「だからどうした」と返せば、今度は何も言わずに携帯画面を差し出す。そこに表示されているのは、『Sie ist meine Nichte!』との文言と写真。恐らく写真に撮られているのが彼の姪なのだろう。もう市内に来ているらしく、俺にも見覚えがあるカフェのテラス席でタバコを咥える姿が写されていた。姪、と書いてなかったら青年と見間違えても仕方ないようなショートカットに気の強そうだが悪戯っぽい笑みを浮かべるその写真を見せられながら、再度「どう思う?」とエルマーに問われる。横で震えていたヴェルナーもやっと落ち着いたらしく、エルマーの差し出した携帯画面をのぞき込み「サトシさんとは似てないっぽいねぇ」と適当な感想を口にする。
「写真まで寄越すって出来るだけ会う方向に持ってきたいんじゃないか?」
「だよねー、良いじゃん会って来れば」
俺とヴェルナーはそう答えればエルマーは「他人事だと思って……」と吐き捨てる。
「いやだって他人事だもん」ねー?と俺に視線を投げ、同意を求めつつ笑うヴェルナーに「ナー」と感情の籠らない同意を返す。そんな俺たち二人を恨みがましい視線で見つめていたエルマーは、携帯に何か打ち込み満足気に送信済みの画面を見せてくる。

「お前らも巻き込んでやるからな!今夜ヴェルナーとトキも一緒に行くって送ったから逃げんなよ」

そう高らかに宣言し、エルマーは俺がそっと肉を割り増しにした皿の上のメインディッシュを掻きこみ始めた。さて、これから如何なる事やら。午後からの仕事量を脳内で考え、終業時間までにきっちり終わらせる為にも俺は自分のデスクへ足を向けた。


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無駄に続いている笹野海外渡航話。久慈さんの彼氏とその周り。

 
| 21:22 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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