Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Unser Haus! 01
 #01 瀬波駿馬の場合
 
「彼は僕が渡独中に世話になった奴の息子さんなんだ。遠い親戚にも当たるかな。」そう言って俺の研究室に見慣れぬ人物を伴い現れた教授に紹介されたのは偉く顔立ちの整った少年だった。向こうの男性としては小柄な部類に入るであろう。しかし、その瞳には少年らしからぬ侮蔑の色が滲んでおり、はぁ、などと間の抜けた返答しかできなかった俺は「じゃぁ、瀬波くん。彼を頼んだよ」とのほほんと笑いながら研究室を後にする教授の後ろ姿を見送るほか無かった。そうして研究室に二人取り残され、とりあえずは自己紹介か。と「講師をしてる瀬波駿馬です」と海の向こう風に手のひらを少年へと差し出せば、その手を一瞥し
「先に言っておきますけど、僕は来たくて来たんじゃない。あなた方と慣れ合うつもりも毛頭ありません」
と、外国人特有の訛りもない綺麗な日本語で、言い放った。
 
――と、まぁこれが数日前の出来事で。
とある大学の理系研究室で講師として働いている瀬波駿馬こと俺は今日も苛立って居た。
「ったぁく!マジ苛つくんだけどあンのクソガキ!」
「それもう聞き飽きた」
片手にタバコ、もう片手には酒というスタイルでグチをぶつける相手は元々同じ研究室の先輩であり、現在は同居人でもある篠原浩介。最初にあのクソガキと出会った日から俺は毎晩酒タバコ浩介のセットを手放せずにいる。聞き飽きたと言われても本日のクソガキへのムカつきを発散しなければそれこそ胸ぐらでもつかんでしまいそうな勢いなのだ。浩介には気の毒だが今夜もまた昼間にため込んだストレスを浩介にぶつけるのだ。
「っていうか、ついこの間までマジ浩介羨ましいー女子高生に囲まれてウハウハじゃんなって思ってたけど俺無理だわ。あんなクソガキ共纏めて指導してるとか超ソンケー」
「ガキみたいなののお守りは昔からしてたからな」
ジト目で俺を見遣りつつ皮肉じみた笑みを浮かべる浩介を「ヘーソウナンダー」とスルーする。そんな俺を五つ年上であることの余裕で流した浩介は「でも」と重ねる。
「そのクソガキくんもやるなぁー、お前をそんな毎日苛立たせてるとは」
「何だよ浩介、お前もクソガキにつくのか」
面白くない、と鼻を鳴らした俺に浩介はいやいや違くて、と笑う。
「お前基本他人に無関心だろ。そんなお前をそこまで苛立たせるとか相当なんだなーと思ってな」
「本当、俺の一番嫌いなタイプなんだよあのクソガキはよぉ……」
あの、他人を見下したような侮蔑の色が滲む瞳、有能であるが故に他人をつき放そうとするような空気。
“あの男”を見ているようでどうしようもなく気持ちが悪いし、俺の心をどうしても苛立たせてくれるのだ。
「でもさ、駿馬。好きの反対って言うのは嫌い、じゃなくて無関心だぜ?」
……なーんて、と冗談めかして笑う浩介に、楯突く言葉は放て無かった。
その代わりに、「ちょっと頭冷やしてくる」とだけ言い、タバコと携帯、そして小銭入れだけ手に取りジャケットを羽織りまだ肌寒さの残る家の外へと足を向けた。

家から少し歩くと、海辺へと突き当たる。俺や浩介は何かあるたびにその海辺へと足を運ぶのを常としており。夏の海水浴シーズン以外は閑散としているこの海辺を俺も浩介も気に入っているのだ。
今日もタバコ片手にブラブラと防波堤を歩いていれば、俺が歩いてきた浜辺のさらに向こう側に人影が見えて。まるで街頭がスポットライトだとでも言うように、その光の束の下に佇む影は、ここらでは見ないような金髪で。「うわ、あのクソガキかよ」確か、教授の家に居候していたんだったか。教授の家も、海から近い場所にあった筈だ。
『好きの反対って言うのは嫌い、じゃなくて無関心だぜ?』
ついさっき、浩介に言われたその言葉が、脳裏に過ぎった。
浩介の言葉と、直感に突き動かされ足を向けたのはクソガキの元だった。俺の気配に気が付かないのか、彼は歌を歌っており。そしてその歌は、懐かしいメロディだった。
「珍しい歌歌ってんな、クソガキ」
「……僕にはヴィンツェンツ・フェルマーって名前があるんですけど」
彼の歌は俺の闖入によって途絶え、冷たさを孕む声で返される。
「クソガキはクソガキで良いんだよ。つうか、お前名乗ってねーだろ」
「名乗らなくたって知ってるでしょう?」
それはもう、取り付く島もなしという冷たい声で。それでも、今までより苛立ちが少ないのは浩介のお陰か、それとも一人海を見つめ歌う彼の瞳が揺れていた所為なのか。
「で、何か用が有るんでしょうね?」
その言葉で現実に引き戻される。そして、クソガキに用なんてまったくもって無く。
「いや、無い」
サクっと答えた俺に、彼は軽く眉根を寄せる。
「何ですかそれ、人を呼びとめといて、しかもクソガキとか言っておいて。用は無い?」
「用が無かったら呼び止めちゃいけないってか。世間話とかさ、あるだろ」
「馴れ合いする為に来たわけじゃないって言いましたよね?」
ごめん浩介、やっぱりムカツク。男にしては少し長い天然もののサラサラとした金髪も、やけに整った顔も、冷たさを孕むその碧い瞳も、笑えば可愛いんだろうけど、なんて思ったことも無くはないが、やっぱりムカツク。ひくり、と口の端が上がったのを彼は見逃さなかったらしく、それを軽く鼻で嗤う。
「あなたと話してても、埒が明かない。あなたが帰らないなら僕が帰ります」
そう言い残してクソガキは俺に背を向ける。
「……ああ、そうかい、じゃぁな。また、明日。研究室で」
その言葉にクソガキは返事もせず、背を向けたままズンズンと突き進んでいった。
「ムッカツク……でも決めた、決めたぞ俺は。何でこんな茨の道突き進んでんのかわからんが、決めたモンは決めた。マジ決めた。」
この後帰宅して宣言した言葉に浩介が目を剥くのは、また、別の話である。

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現パロササセナヴィン。
ポラリスのササセナSA企画のヴィンが好き過ぎて現パロ妄想が楽しい。
お前らはよ三人で同居しろ。わきゃわきゃしてろよ。
 
| 20:29 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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