Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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チョコレートの箱を開けよ! Ex.04
 
「あれっ、九里?」
そうやって懐かしい声を投げかけられたのは、アーケード街の中にあるチェーンの喫茶店の会計コーナーだった。



くのり君と映画祭


「え、笹野?久しぶり?」
思っても見なかった相手との再会に思わず疑問符まみれの返答をしてしまった僕に、彼女は片目が隠れる程伸びきった前髪をかきあげながらカラカラと笑う。最後に会ったときよりも確実にくたびれた様子を見せているけれど、目の前の相手は高校時代の同期だった。会計を終えて注文した品をトレイで受け取った僕を「一人ならさ、待っててよ」と引き留め、彼女自身もトレイを受け取れば「しっかし久々だなー」と笑う。選ぶ座席は喫煙席だったけれども、座席の希望を訊くのを忘れていつものように座ってハタと気づく。「笹野も吸ってたよね?」最後に会ったのは大学時代、まさか禁煙なんて始めてないよな、なんて昔の記憶をほじくり返せば。「禁煙とか無理無理」と青緑色の箱を顔の横で掲げる「笹野も吸うんだ」とこちらも黒い箱を取り出せば、「ま、ね」なんて早速タバコに火をつけるのだ。
「それにしてもこんな所で会うなんてね」とこちらもタバコに火をつければ、「それなー」と彼女は相変わらずのテンションの低さで笑い、言葉を続ける「もしかして、九里も短編オールナイト?」と。
短編オールナイト、を指すのが今、このアーケード街にあった映画館で行われている映画祭のオールナイト上映を指すとすれば、答えはイエスだ。
「そ、短編映画祭。って九里も、ってコトは笹野も?」と返せば彼女の答えもイエス。
「ちょっと早いけど自分の誕生祝いに明日明後日の連休もぎ取ったからさ、仕事帰りにオールナイト上映よ。念のために毛布持ってきたわ」と付け足しながら。
「毛布って寝る気満々なんじゃ……っていうか誕生日もうすぐだっけ?」と問えば返ってくるのは念のためだという念押しと、1週間後の日付。
「そりゃ、ちょっと早いけどおめでとう。じゃぁ僕からのプレゼントでオールナイト上映おごってあげようか」
そんな申し出をしてみれば「マジか」と少しテンションが上がったような笹野の声。「チケットならいっぱいあるからね」と綴られた回数券を見せれば「流石九里」との声。
流石に少しは余りそうだったから3枚分位譲っても問題は無いのはそっと伏せて「久しぶりだしね」と笑ってみせる。
「流石九里サマ、あざーっす」
おちゃらけたトーンでそう告げる笹野に「だから寝たら承知しないよ」と付け足した。
「それについては念のためだから、念のため」


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九里くんと笹野は高校時代の部活同期かつ、大学こそ違えどジャズ界隈の人だったりする。
 

 
| 20:26 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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