Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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あなたの誕生日を皆で。
 


何となく気合いを入れて作ってしまったご馳走に、浩介が選んできてくれたいつもより上等なワイン。ヴィンが友人に教えてもらったという人気のケーキ屋で買ってきた三人で一気には食べ切れなさそうなホールケーキ。我が家のダイニングテーブルにこれだけの物が並ぶのには少しだけ、理由がある。




「Alles Gute zem Geburtstag シュンメ!」


「おめでとー」


ドイツ語と日本語で祝われるのは、俺の誕生日。赤ワインが注がれたグラスを掲げて「有り難う」と答えれば、二人は笑みを深める。こんな誕生日は久々だな、なんて思ってしまって思わず笑う。


「なに笑ってんだよ駿馬」


目敏く俺の笑いに突っ込みを入れる浩介に、「いや、こんな誕生日久々だなーって思って」と答えれば、「お前が言わないからだろ!」と怒られてしまう。そう、事の起こりは数日前まで遡る。




「駿馬、お前そういや誕生日っていつだっけ」


20年近い付き合いの浩介にそう問われ、俺は思わず首を傾げていた。何でこのタイミングで訊いてきたのかという疑問で。曰く、ヴィンに訊かれたが自分も知らなかったという事で。ヴィンもヴィンで出会って3年目、同じ研究室の仲間という関係以上の関係になってから2年目にしてそういえば、と疑問に思ったらしい。そして、俺が口にした日付に浩介とヴィンが仰天したのは言うまでも無い。


「お前さ、流石に何なのって俺でも思うよ?」


「あと1週間も無いじゃん!サプライズとか出来ないよねこれ!?」


冷静に呆れる浩介と、頭を抱えてしまったヴィンに「ごめんごめん」と笑い、当日の夜は開ける、ついでにちゃんとご馳走を作れと半ば脅され現在に至るのだ。ついでにカレンダーにははっきりと花丸を書き加えられた。




「でもコースケもシュンメの誕生日知らなかったってことが驚きだよ。20年近く一緒にいるんでしょ?」


「あー、あんまり訊かない方が良いかなって最初の頃に思って以来昔のことは訊かないようにしてたからなぁ」


そう言われてしまったヴィンが押し黙り、俺は思わず苦笑を漏らす。思い出して楽しくはないが、気を使われるのが嫌で基本的に親しい相手には話してある自分の過去がこう作用するとは。自分自身誕生日なんてものを祝われた覚えが殆ど無いから誕生日というイベントを忘れていた節は無いわけではないのだけれど。ちなみに今日が誕生日だと言うことを、俺は免許証を見て確認した。数年に一度、誕生日を思い出すのが免許の更新だからなのだけれど。


「でも、ありがとな。二人とも」


そう改めて告げれば、二人は同じように首を傾げる。


「多分、今日が生きてきた中で一番嬉しい誕生日だよ」




呆気にとられた顔をする二人を見ながら上等なワインで喉を潤す。甘く深い味わいにもう一口、とグラスを傾けていれば、浩介は笑う。


「これから先はずっと祝うよ。来年も、再来年もその次も」


「勿論だよね!だって、シュンメが今まで生きててくれたんだから僕はシュンメと出会えたんだし」


そんな事を良いながらニコニコと笑う二人に、俺はどうしようもなく照れくさくなって、「恥ずかしいこと言うなって」だなんて、思ってもいないことを言ってしまうのだ。






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誕生日を言わなかったセナさんと誕生日を祝いたい二人。




| 20:47 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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