Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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チョコレートの箱を開けよ! Ex.03
 
帰宅と共に目の前から繰り出されたのは光る青い棒による突き。ピカピカと光りながら何やら音を出すその玩具は顔の横を瞬間的に突き抜けて、戻る。棒を持たない手を眼前に突きだし、弓を射るような姿勢でドヤ顔を晒すのは、同居人の楓だった。


くのりくんと沼について


「……おっ前……家の中でぼっこ振り回すなよな……」
えへへーなんてかわいこぶっている楓にため息一つ、数ヶ月続いている悪癖に火が突いたまま火だるまになっているこの同居人は、遂に玩具にまで手を出してしまったらしい。フィギュアとか、ぬいぐるみとかならまだしも。というか、すでに数体の人形が彼の部屋に鎮座していることも知っているからもうどうしようもないんだけれども流石にこの歳で光る剣を買うだなんて思いもしなかったし、このまま行くとこいつは部屋の中で新型ロボのラジコンを駆け回させるのではないかと密かに戦々恐々としている。
それもこれも、40年近く前に初めて公開されてから世界中でブームを巻き起こした映画のせいだ。最初に公開された3部作は俺も楓も生まれてすらいないから劇場では見れなかったけれど、その後俺たちが多分中高生位だった頃に公開された新3部作と呼ばれるものは劇場で見た訳で。そしてその頃自由にグッズを買えなかった物欲が楓の中で爆発してしまったらしい。ぶっちゃけ、劇場前売り券が某コンビニで銀河最速発売!なんてCMを見てた直後に「前売り買ってきたー」と笑いながら帰ってきた楓には軽く引いた。さらに言えば、市内の辺境でやってたその映画に纏わる展覧会で山のように物販買いあさってた辺りでもう引いてた。蛇足ながらもっと言えば新3部作が公開されてた頃にやっていた展覧会に2回行ったという自己申告にも引いた。楓の映画好きは昔からというのは知っていたけれど、俺の比じゃないというか、俺どちらかというと劇伴好きだし。確かにあの映画の劇伴好きだけどね。ドルビーステレオシステム導入とかEP1公開から数年経って知って遅ればせながら心ときめいたけどね……なんて、意識を明後日の方向にやっていれば再び楓からの突きが繰り出される。
「うぉ!?」
今度は攻撃性を持って繰り出された突きを何とか回避して間を詰めてその青く光る玩具を取り上げる。
「マスターにはほど遠いな、楓」
玩具を取り上げられた子供はふてくされた顔を見せながら「僕の本気はこんなもんじゃないし」と返す。
「お前の本気って怖いからやめて」
思い出すのはもう何年も前になる高校時代。部活こそ一緒ではなかったけれど、お隣さんな少人数部活ということでそこそこ部活同士での交流があった頃。楓の先輩で俺のクラスメイトだった奴が戯れに持ってきたチャンバラ用の柔らかい剣を持ってきて部活対抗お遊びチャンバラをしていた頃の事。俺は柔道部、楓は剣道部だったのだけれど、チャンバラをしていた楓は目の色が変わってた。対戦させられた時は怖くなかったと言えば嘘になる。その時の事を思いだし、背筋を震わせるものを感じた俺は、俺の手の内で未だ光っているその剣をカシャンと柄に戻して、一つだけ年上な威厳を込めて一言発するのだ。
「人に向けてライトセーバーを振ってはいけません」と。


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十河さんは劇伴フェチ。ライトセーバーを振り回す九里くんはサマになってると思う。




 
| 08:26 | チョコレートの箱を開けよ! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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