Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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ろうそく欲しけりゃ、くれてやる!
 
 
「ただいまーって、姉ちゃん何やってんの」
姉の自宅で帰ってこなかった姉の分まで掃除洗濯を済ませて実家に帰れば、居間で薄気味悪い笑みを浮かべながら小さなカップを使って何やらやっている姉の姿。
珍しく外まで聞こえる音量でクラシックのピアノ曲が流れてると思ったらこいつの仕業か。なんて思いつつ、帰宅第一声はその妙な行動の理由を問う。
「コレか?ホラ、今日七夕でしょ、だからその準備」
この地域特有の一カ月遅い七夕という今日の行事を口にして、夕方までに終わらせないといかんのだからちょっとアンタも手伝え。とダイニングテーブルから手招きされ、そこまで行ってみると、姉が作ろうとしているものが判明する。それは、ジェルキャンドルで。
「ウワァ……」
思わず声が漏れ出る。それを姉の耳に拾われ「すごいだろ!」とサクサク作業しつつも自慢げに声を上げる。しかもドヤ顔で。本当、何でこの人こんな事でイキイキしてるんだろう。
「それはそうと、何で今年は唐突にこんな?」
いつも仕事仕事で七夕なんて気にもしない癖に、と問えば、いやぁさぁと間の抜けた相槌を打ちつつ、姉は言葉を繋げていく。
「去年の七夕過ぎた辺りに母さんが「最近の子供は車で家を周りに来るとかけしからん!」って言うから今年は上げて落とす作戦で」
この地域では七夕の夕方、ろうそく出せというような歌を歌って近所の家を練り歩き、お菓子をせびる習慣がある。ちゃんとした由来があった筈だけど、興味が無かったからか、完全に忘れた。ろうそくとは名ばかりのお菓子を出さないとかっちゃく上に噛みつくだとか、お決まりな歌も大概酷い。俺らが“ろうそく出せ”をしてた頃は近所の子達とあの家はくれないとか、あそこの家は豪華だとか、そこの店はジュースをくれただとか、他のグループと会う度に情報交換をしていたものだけど、今や親が車で連れまわす、と。ガソリン代考えたら自分でお菓子買い与えた方が効率的だと思うんだけど。
「……上げて落とす?」
そんな過去に思いを馳せながらも、上の空で返したその問いに、姉はドヤ顔でそう、上げて落とす。とにやつく。何処からどう見ても悪の顔だから、ホントその顔辞めた方がいいと思う。
「ジェルキャンドルって結構重量あるっしょ?で、それと適当な菓子紙袋に包んで渡すワケよ。キャンドルの重量と中が見えない袋でこれは大物かと期待したガキは袋を開けてちゃっちい適当な菓子にテンションダダ下がりって訳よ!」
ハッハー私天才!なんてテンションが可笑しい高笑いでジェルキャンドルを作っていく姉は正直言ってコワい。というか、「キャンドルの方が手間も金もかかってるんじゃ……」そんな突っ込みには「当然でしょ」という何でも無いような言葉で返される。
「こういう事は手間も金もかけてやるから楽しいのよ。社会人舐め腐りやがってあのクソガキ共……今日の為にバッチリ休みもぎ取って来たっつーの」
こういう所、本当に性格がねじ曲がった上に千切れてる。個人的に恨みがあるらしいクソガキが来るかは知らないけれど、こんな事で姉の気が済むならそれでも別に問題無いだろう。と思い返して姉が完成させたキャンドルをラップで綺麗に包んで行く。「モンペに文句言われないように完璧にやらなきゃ意味ないからね」と間違っても菓子とキャンドルが触れ合ってぐちゃぐちゃになってしまわないようにという所まで考えるあたり本当気合いが入っている。今回の仕込みはあくまでルールの中でどれだけガキをがっかりさせるか、のようだ。
「ろうそく出せって歌ってんだ。ろうそくくれてやるよって話だよな」
「それでもちょっとはお菓子入れる辺り姉ちゃん優しいよな」
「ばっ、バーカ!菓子もちゃっちいからそれも残念ポイントだ!」
ああそう、と相槌を打ちつつ、俺は出来あがったキャンドルを包む作業を続ける。何かもう姉ちゃんがアホ可愛い。


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北の大地は今日(8/7)が七夕です。弟はツンデレになりきれないシスコンでござる。






 
| 08:21 | 飲んで喚いて呑まれて飲んで。 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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