Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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似てない兄弟・似たもの同士
  
(トキとササハラがくっ付いた後の話)

 

「それじゃぁ、浩介さんの仕事が終わる位の時間に迎えに行きますね」
国際電話の通話相手がそう言いだした所で、こうなる可能性について気付くべきだった。
 
遅くまで部活に勤しんでいた生徒達が帰る頃に、俺も職場である学校の玄関を抜け出して、パタパタと俺を抜き去って帰る彼らの背中に「気をつけて帰るんだぞー」と気の抜けた声をかけていた時にその異変に気付かされた。
何か、人だかりが出来ているんだけど。
心の中でだけそう呟いてその人だかりをチラリと見遣ればスカート姿の女子集団の中心で多少慌てているらしい男の姿。その男の隣には高級車。そしてだめ押しのごとく、男が助かったとでも言うように上げた「浩介さん!」の声。
「まじかよ……」思わず額に手をやってしまった俺は悪くない。その人だかりの中心に居た男は、昨日国際電話で話した相手その人だった。
 
「兄弟揃って!何でそんな派手な登場かますんだよ!」
こちとら一般的な高校教師だ!とビールを呷りながら叫べば、「荒れてるねぇ」と同居人である駿馬は笑う。駿馬の隣で兄弟の弟のほうは悪びれもせず笑っているし、ローテーブルを挟んで俺の正面に正座する兄の方はうなだれる。
名前を呼ばれ女子集団がこの人先生の知り合いなんですかー!だのなんだのと訊いてくる中を適当に混ぜっ返しスルーし誤魔化して彼の車に彼をつっこみ俺も助手席に乗り込んでたどり着いた自宅でその帰りを待っていた同居人二人に事の顛末を話す。話せば話すほど正面の彼はしょげていくのが内心楽しかっただなんて事は口が裂けても言えるものか。
「ブリオーニのスーツにアストンマーチンて本当何処のエージェントだよ、時嗣!」
そう突っ込んでさらにしょげてしまった事の発端でもある彼ーー時嗣の代わりに口を開くのは彼の弟でもあるヴィンだ。
「スーツは兎も角、車はトキの母親のだよ。シズカさんの実家に置いてあったの、トキだって恋人に良いトコ見せたかったんでしょ」
ま、コースケも真っ赤なベンツで迎えに来られなかっただけマシだと思うことだよ!と更に重ねて時嗣は更にどんよりとし、俺は俺で真っ赤なベンツで迎えに来られる事を想像してしまった為に、顔がひきつってしまう。
「あ、浩介お前今想像したろ。顔、引きつってんぞー」
ここぞとばかりにはやし立てる駿馬に「からかうな!」と噛みつけば駿馬とヴィンのコンビはケラケラと笑う。
本気で怒っている訳では無かったのだけれど、本気で申し訳なさそうにチラリと目線を俺に上げる時嗣がそろそろ可哀想になってきた俺は「まぁ、弟の方で慣れてるから」とヴィンを指さす。「その代わり、明日は旨いもん食いたい。時嗣の手作りで」と夕食のリクエストをする。
「そんなので良ければ幾らでも!!台所、お借りします!」
ガバッとうなだれていた頭を上げてそう食いついた彼に、駿馬は笑いながら「良いよ、好きなように使って」と返す。
「俺ら、明日は泊まりで実験しなきゃいけないから、存分にいちゃついてくれて構わないからさ」と付け足して。
ニヤニヤと笑う駿馬とヴィンに謀りやがったな。という感想だけ抱き、正面で真っ赤になって慌てる時嗣に思わず噴き出して、グラスに残ったビールを飲み干す。
 
たまにはこんな日も悪くない。癪だから言わないけれど。


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兄弟揃って派手な登場をかますフェルマー兄弟は正義(まがお)


 
| 00:10 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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