Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK |
| CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
彼女に纏わる想いの話
 
設定

・幽霊は「自分が一番充実していた時の姿」で現れる
・「本当に幽霊になった相手に会いたい」と思っている人間には幽霊を見ることは出来ない
・幽霊が見える相手だと触ることが出来る
・幽霊が見える人と見えない人がいる


書きたいところを書きたいだけ。



墓石と幽霊

自分が死んだのは何時の事だったか。ぼんやりと意識を取り戻したのはつい先日の事だったけれども、今の時間が判らないのだから死んでから何年ということも思い出すことなどできない訳だ。思い出すという言葉にすら違和感を感じるのだけれども。墓石にはデカデカと舞島家なんて表示もあるし、ご丁寧に舞島葎花と彫られている事も確認済みだ。私の遺骨もこの墓の下にぶち込まれているのだろう。
ジーンズにTシャツ、その上にお気に入りだったマウンテンジャケットを羽織った姿で墓石に腰掛ける姿は不遜にも程があるだろうけども、幽霊であるらしい自分がほかの場所に移動できるのかどうかすら謎な現状、他にどうしようもないっしょ。なんて誰に対してでもない言い訳をしながら、私はぼんやりと青空を眺めるほか無かった。



幽霊は彼女と彼に出会う。

「おばちゃんだぁれ?」
その幼い声にどこぞへと飛んでしまっていた意識がクリアになり、その問いにすぐには返せず目の前に立つ何故か柄杓だけを持った少女を見おろす。おばちゃんという呼び名にショックを受けている訳ではない。結構イイ歳まで生きたのだ、おばあちゃんじゃなかっただけマシだろう。しかし、墓石に腰掛ける見知らぬおばあちゃんなど不審人物以外の何者でも無かろうに、声を掛けるとは結構この少女肝が座ってる。若い時分に懐いてきていた親戚の少女が意識の端でチラついていたけれども、彼女だってとっくに大人になって居るので除外。
「おばけかな」なんておどけて彼女の問いに返してみれば「うそだぁ!足があるよぉ!」とキャッキャと笑う。
「それじゃ、ササノ組のワカガシラとでも呼んでくれればいいよ」
よく戯れに名乗っていたその呼び名を選んだのは気紛れだったが彼女からは「ながーい!」と不興を買ってしまった。「ささ組のワカ……ガ……シラ?」ワカガシラが何かもわからないのであろう少女は首を傾げる。「好きに呼んでいいよ」と笑いかけてやれば、「ワカおばちゃん!」と弾けるような笑顔で呼ばれる。おばちゃんちょっと複雑。
「で、お嬢ちゃんはどうして此処に? 迷ったのかな?」
まさか同類ではあるまいな、と思いながらも問えば、その手に持つ柄杓をビシッと私に向けて「おばあちゃんのおはかまいり! おじいちゃんと来たのに、おじいちゃんがまよっちゃったの!」と胸を張って答える。君が迷ったのではないのか。
「そっかーおじいちゃん来てくれるかな?」
「くるよ!おじいちゃんね、まよっても、ぜーったいおばあちゃんのおはかにはたどりつくんだって!」
「怖いな」
「あいのちからっていってたー」
「そら凄い」
そんな気の抜けた会話を少女と交わしていれば、遠くから聴こえるのは歳を重ねた男の声。
「りーつーひとりで来れたのかぁー」
「あ、おじいちゃんだ!」
その聴き覚えのある声につい、少女に問いかける。
「君、りつちゃんって言うの?」
「うん!いつき、りつ!ごさいだよ!」
「マジでか」
そして彼は私の前に立つ。
「莉都、誰か居るのかい?」
彼は少女にピントを合わせて問いかける。
「ワカおばちゃんとおはなしてるんだよー」
「莉都の他には誰もいないじゃないか」
「いるよぉ!……あれ?」

二人から隠れるように、近くにあった茂みに飛び込んで、ふと思ってしまった私は悪くない。
「コレが本当の草葉の陰ってか」



旦那と幽霊

孫娘を忙しい娘夫婦から預かって、散歩がてら妻の、孫娘からしてみれば祖母の墓参りをする。そんなに代わり映えのしない一日の筈だった。
「ワカおばちゃんとおはなししてたの!」と誰も居ない空間を指差しながら、笑顔を覗かせて宣言する孫娘を見るまでは。
『ささ組のワカおばちゃん』と言うのは、死んだ妻が戯れに名乗っていた『笹野組の若頭』では無かろうか。莉都にそう問えば、そーかも?なんて歯切れの悪い答え。ながいんだもん!と畳み掛けられ、それ以上の追求は出来なかったのだけれど。
「俺も会いたいんだけどなぁ」
孫娘も娘夫婦の元に帰り、誰も居ない家の中で、どこにも届かないそんな言葉を虚空に投げかければ「居たところで見えない癖に」と苦笑混じりで返す妻の声が聞こえた気がした。



幽霊と娘婿

「部長、ウチの会社で幽霊が出るってウワサ、知ってます?」
昼休み、サンドイッチを摘みながら画面と睨み合ってた俺に、部下がそんな言葉をかけて来た。
「幽霊? まぁ、夏だから怪談が流行るのは仕方ないにしても、唐突だな」
睨みつけていた画面を一旦保存して、そんな事を言い出した部下に視線を投げる。部下も「コレは同期から聞いた話なんですけどね」と前置きしながら話を続ける。
「誰も居ない筈の夜中の社内に忘れ物取りに来たら、ひとつだけパソコンがついてて猛烈な速さでひとりでに動いてたそうで」
「消し忘れと見間違いだろ」
そう返しながらサンドイッチにかぶりつけば、俺の側までやって来て、声を落としてひそりと言葉を重ねる。
「俺もそう言って笑ってたんですけどね、動いてたパソコン、誰も使ってない筈のパソコンだったんですって」
「誰も使ってない?」
訝しげに問えば、部下は俺の隣、営業部の島で唯一空いているデスクを指差し重ねる。
「元部長のパソコンです」
「舞島さんなら化けて出て来てもおかしくないな」
「アレッ怖くなかったですか?」
サラッと返答する俺に、とっておきだったのにーと悔しがる部下。サンドイッチを胃の中に全て流し込み、ついでにそんな部下も横目で流しながら俺は保存していたファイルに向き直る。
「幽霊でも舞島さんならお前の5倍は働いてくれそうだからな」
「部長酷い!!」
ぎゃんぎゃん吠える部下はスルーし、俺は心の中で元部長へと呼び掛ける。「そんな怪談になる位なら俺ン所に化けて出て企画書の一つや二つ、目ェ通して下さいよ」と。


—————————————————

笹野の外見は多分50代半ばでバリバリ部長してた頃。







 
| 00:04 | 飲んで喚いて呑まれて飲んで。 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
Comment








<< NEW | TOP | OLD>>