Untitled.短文保管庫。
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チョコレートの箱を開けよ! #01


「ただいまー」

そんな暢気な声をあげつつ玄関のドアを開ければ、同居人はリビングのソファにちょこんと体育座りをし、両手で持った大振りなマグカップを弄びながら、意味の解らない映画を見ていた。


そごうサンとくのり君


「またソレか」
同居人からの返答はない。リビングに置かれた大型のテレビに映されていたのは確かイタリアだかスペインだかの芸術家が誰かと共同で監督をしたという、シュルレアリスムの傑作と評されるモノクロの短編。時間はおおよそタバコ三本分。ドアを開けたときに目に入ってきたのが目玉を切り割いていた所だから始まったばかりだろう。
同居人が好んで見る作品の一つだ。
そんな同居人との同居ももう三年ほどになる。
そんな同居人との出会いはと言えば。元々高校の後輩だったらしいけれども、同じ道場で部活に勤しむ隣の部のエラく顔の整った一つ下の男、程度の認識だったし、名前も曖昧にしか覚えていたかったからカウントしていいのか解らない。本格的に言葉を交わし始めたのは、お互い高校を卒業した後のバイト先だ。だからといって同じバイト先でバイトをしていたのかというと、ソレも違う。
お互いがお互いの職場の常連だったのだ。
同居人である九里楓(クノリカエデ)のバイト先は十年程前に再開発された駅前エリアのシネコン。そして俺、十河睦(ソゴウチカシ)のバイト先は昔からの繁華街――と言っても、まだまだ現役である――に位置するCDショップ。徒歩移動が余裕な位置関係にある俺らの職場はお互いがお互いの職場の常連になるのに一役買っていた。そこで顔見知りになった後、最近140周年だかを迎えたというアーケード商店街の外れにあるミニシアター系の映画館でばったりと会った。それが出会いだ。今思い返すと、本当何で同居してるんだろう、と思う。
監督が目当てだったらしい楓と音楽が目当てだった俺、目当てのものは違えども、同じ作品を見たついでにと近くの喫茶店に入ってその映画について語り合ったし、その後お互いの職場で会うとそれまでよりも少しだけ友情、みたいなものが生まれていたし、お互いに地雷が無いおかげで二人で映画を見に行くことも多くなった。
そしてそんなこんなで専門学生だった俺は早々にフリーターの道を突き進み、その後を追うように楓も就活を投げ捨てそのままシネコンでバイトをしていた。同居はどちらが言いだしたか忘れたが、たぶん俺だろう。お互いに家からバイト先が遠かったし、市街地でも割り勘で借りれば生活できないことは無かった。そこそこ良いところ住みたかったし。
同居人の困った癖を知ったのは同居した後の事だが、それに関してはルールを設けたし、その後困った展開にはなっていない。同居人はバイで、誰彼かまわず寝る男だった。ただそれだけの話だ。と、そんなことを考えながら突っ立っていたらタバコ三本分の映画は終わりを告げていたらしい。リビングに至る扉を開けたところで突っ立ってる俺に不審気な視線を向け、そのあと口角だけを上げた笑みを浮かべつつ口を開くのだ。
「おかえり」と。
俺は存外、この生活を気に入っている。
 
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十河さん(26)と九里君(25)
九里君最初は普通の男の子だったはずなのにどうしてこうなった。
まぁ、ゲイ寄りバイのクソビッチ九里君がすごくしっくり来たんでしゃぁない。
 
| 20:15 | チョコレートの箱を開けよ! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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