Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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The Wedding
 
「ツカサ、久しぶり」
そう言って部室を訪ねて来たのは学生時代の同期。お互い幽霊部員みたいなものだった上、学部も学科も違っていたけれども何故だかそこそこに仲は良かった男。
「クノリ? 久しぶりだな」
何故今更此処に、という疑問を込めつつもそう返す。
齢30も過ぎた私とクノリが大学で顔を合わすというのもおかしな話だ。奴は学生時代と同じ、悪戯をしている子供みたいな笑みを浮かべて「ミナトに呼ばれてね、僕やミナトの他にもリキュウとかサクラとかも来るよ」と言う。
「同期会でもするつもりか」
「まぁ、そんなトコ。あと、噂のハルナちゃんも来るね」
クノリの口からハルナの名前が出た事に首を傾げる。それに、ハルナは朝出る前にそんな事は言ってなかった、という疑問もある。
「待て、何でお前がハルナの事を知ってるんだ?」
「あ、それ俺ね」
そう言いながら部室に入って来たのはミナト。パーカーにジーンズのクノリとは逆にこいつは仕事帰りですと言うようなスーツ姿。
「ミナトが事あるごとに報告して来るんだ」
「ツカサ以外の同期は俺含めて「ツカサの安否を見守り隊」だから、情報は共有しなきゃ」
それこそ悪戯が成功した子供みたいな顔で笑う二人に私は自然と渋い顔になる。
「私の安否を見守り隊って何だよ」
「学生の頃って、ツカサ本当に死にかねなかったじゃん。だから、卒業してからも俺らは不安だった訳。だから、見守り隊」
そう言うミナトは清々しい表情で、隣に立つクノリも好青年のような爽やかな笑顔だ。30過ぎの男に好青年というのもどうなのだろうとは思うが。
「おひさー」
「お前ら早いよ」
そんな事を考えていれば、リキュウとサクラも部室に入ってくる。この二人とも卒業以来会ってない。
此処らへんで此処最近のミナトとの会話を振り返り、嫌な予感に駆られた私はハルナへと電話する。3コールで電話に出たハルナに更に嫌な予感。
『どうしました?』
「ハルナ、お前今何処だ」
『学校ですよ、もう少しで部室に行けますんであとちょっと待ってて下さい』
「お前、今すぐ引き返せ。私も直ぐに帰るか「あっ、ハルナちゃん? 俺俺、ミナト。もうすぐ来る?ウン、部室で待ってるよ」
携帯を奪い取られ、短い抵抗は終わりを告げる。
「何か同期が集まった意味が分かった気がするし、お前にあんな事言った私がバカだった」
まさか同期に筒抜けだったなんて思う訳が無い。三日前の私に会えるのならば、ミナトにだけは言うなと肩を掴んで力説してやる。
そう、それは三日前の話。

「ハルナと籍入れた」
数週間振りに最早十数年通い詰めているファミレスで顔を合わせたミナトに私はそう言った。
「遂にかぁ、おめでとう。式は?」
「とりあえず、ありがとう。式は全く考えてない。元々一緒に住んでるからなぁ、書類だけ出して生活は変わらないし」
変わった事と言えば、左手薬指に指輪を着けた位なものだった。私は仕事を辞めるつもりはないし、ハルナは相変わらず忙しい日々だ。
「もうツカサって呼べないね」
「ハルナ何て今でもツカサ呼びだぞ」
「それはそれでどうなの」
そんな事を話して、ファミレスの安いワインで乾杯した。そう、それだけの話だった筈なのに。


「……何でこうなってるんだ」
回想を終えて、抱く感想はその一つだけ。
「お疲れ様でーす、ってツカサさんどうしたんですか? 頭抱えて」
頭を抱えて過去の自分の迂闊を後悔していれば、入って来るのはハルナ。そして、ハルナが入ってくれば浮き足立つクノリ以下ハルナとは初対面の3人。
「へー、キミがハルナ君かー」
「写真でも見たけど可愛い系だよね」
「ツカサ趣味変わった?」
サクラ、リキュウ、クノリの3人が3人とも酷いことを言い、初対面の相手3人から好き勝手言われるハルナは助けを求めるように私に視線を寄越す。
「ハルナが困ってるだろ、名前くらい名乗れ」
そう言ってやれば、リキュウが代表して口を開く。
「私がピアノのリキュウ、保育士してるよー、で、こっちの兄ちゃんがギターのサクラ、平々凡々としたサラリーマン。メガネのイケメンがボーカルのクノリ、駆け出し小説家だっけ? 宜しくね!」
そう言って無理やりハルナと握手するリキュウは相変わらずのラテン系だ。このまま行くと抱きつきかねないのでハルナを手の届く範囲まで引っ張り込む。そうすればリキュウは「きゃーラブラブじゃーん」と黄色い声を上げるのだ。
「さてと、揃った事だし、出かけますか」
同期達がワイワイ騒ぐ中、当時の部長でもあるミナトが号令をかければ、3人の同期はそれに従う。

「今日の主役はツカサとハルナちゃんだからね。俺たちからの結婚祝いだよ」
「それだけは言われたくなかった」


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ツカサさんとハルナくんが籍を入れたそうだ。
九里くんとツカサさんを書きたかっただけなのに、どうしてそうなった。
30オーバーの九里くんは小説家としてデビューしてます。ハルナくんが九里くんの作品を読んでたら私が楽しい。



 
| 23:56 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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