Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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夜中の流し
 
夜も遅い時間、おれと結城はあるビルの地下に居た。目の前の扉はおれ達も何度か使った事のある小さなライブバーの入り口だった。10人のキャパがあるかどうか、というような小さなバーで、昼間に内輪でライブをしたり、バンドの打ち上げで流れ着いてセッションしてみたり、そういう使われ方をするそこの入り口前で、待機。隣では結城がケースから出したテナーを首からぶら下げて、携帯片手にソワソワしている。
「ねぇ、結城、何でおれ達こんな所で待機してんの?」
「いーから! あとちょっと、あとちょっと! っとキタ!」
結城のiPhoneがポーンと音を立てる。それを合図に結城は思いっきり入り口のドアを開けた。
「ハァーイ!流浪のテナー吹きデース!流し始めましたー!!」
いや、結城、待って、色々おかしい。
奥に座ってる長髪のお兄さんとかすっごい冷たい目で見てるし、ダルそうにネクタイ緩めてる小柄な人は苦虫噛み潰したというか噛み続けたみたいな顔してるし、あっ、長身メガネのお兄さんはニコニコしてるか。寧ろニコニコ出来てるのがすごいね!!
と、いうか、この怪しすぎる登場の仕方と結城の天然モノなブロンドとかさ、怪しい外人だと思われてるんじゃないかな……?
「ホラ、片桐、行くぞ」
「えっ、この空気で普通に入るとか結城意味わかんない」
「ノープロブレムノープロブレム、テイクファイブやるぞ!」
「えええー」
この空気で、何でこいつ普通に演奏しようとしてんの。結城がこうなったらどうせ止められない、おれも腹を括ってピアノの前に座る。ピアノの前に座ってひと呼吸。意識を鍵盤と音、結城にだけ向ければ鍵盤に指を走らせた。テイクファイブ、変拍子のこの曲は結城と2人でよくやる曲だ。伴奏がおれ、メロディを結城、そしてふた周り目にはメロディラインをおれがなぞって結城はバッキングにまわる。お互いにアイコンタクトでソロを投げ合い、テーマへと戻る。
最後の和音から指を離せば、ひと呼吸、それと同時に三人分の拍手が鳴った。
「駿介、お前怪しすぎだろ」
気怠げな拍手を送ってた小柄な人が結城に向かって最もすぎるツッコミを入れる。
「えーっ、インパクトある登場してみろって言ったの芹さんじゃないですかー」
「ただの怪しい外人だったぞ、お前」
おれもそう思います。と頷いていれば、長身メガネのお兄さんが「ねーねー芹ちゃん、この二人は一体何者なの?」と。本当だよ、この場でおれ達は一体何者なんだ。
「流浪のテナー吹きとピアノ弾きじゃね?」
「芹さん酷い!」
小柄な人は結城の言葉をスルーするし、長髪のお兄さんの視線は相変わらず冷たいままだ。
「改めまして!俺が流浪のテナー吹き改め結城駿介でーす、こっちのピアノは片桐、どうぞ宜しく!」
「どうも、片桐です」
「あっ、俺は青山和泉ードラムだよー」
「ンで、私がベースの春山芹、あっちはピアノのリンだ」
やっとの事でお互いに自己紹介を終えると、春山さんは「まぁ飲めや」とビールの缶を寄越してくる。
「駿介、他のメンバーは来ないのか」
「ギターは一応高校生だから無理っすねー、ベースも今日は無理っぽいかなー、あ、タァ兄にメールしてみます?」
「ああ、巽か」
そんな会話をしながら、鷹晴さんにメールを送っていた結城に、最初から持っていた一番の疑問を投げかける。
「ねぇ、結城はこの人たちとどんな関係?」
その問いに、結城は事もなげに「芹さんは地元のご近所さんだよー、あとの2人とは初対面!」と返してきた。そんな所にあんな登場かましたのか。ある意味尊敬するよ。
そんな、俺の呆れきった顔に何を思ったのか、ノープロブレムノープロブレム!と笑う。
「音楽は世界共通語だから!」と。
わからないではない、けれどいきなりすぎる。
おれは困惑のまま、この場に留まる事になった。でもきっと、この困惑も、手にしたビールを飲み干して、セッションを始めるまでだ。
なんたって、音楽は世界共通語なのだから。

(「あっ、芹さん! タァ兄仕事終わったから今から向かうそうですよー!」
「マジか。喜べ和泉、元ヤンドラマーが来るぞ」)


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お星様投げつけられたので、ついECOさん(JJ*nano-spiral)宅ブルースプリングと拙宅バードランド結城・片桐くんとのコラボを。




 
| 23:37 | コラボ関係 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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