Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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隠れニコチンの効能
 
先月から通いはじめた大学は全面禁煙で、喫煙所というものが存在しない。その代わりに、学校の裏口周辺が暗黙のうちに喫煙所と化している事を、通いはじめて数日後に知った。大学に入り、一人暮らしを始めた楽器演奏可のアパートから学校へと向かうには裏口から入るルートの方が正門から入るルートよりも近いのだ。さらに言えば学生が自由に利用できる練習室がある棟も裏口から入る方が近く、学校に行く時は大抵裏口から出入りしていれば嫌でも裏口で紫煙を燻らす人の姿が目に入るという訳だ。次の授業には少し早い時間、だけれども家に帰ったり練習室に篭るには少し短く感じる手持ち無沙汰な時間の穴をタバコで紛らせてしまおう、と裏口に出てみれば見覚えのある、金髪。
火のついていないタバコを咥え、オイルライターのフリントをしきりにチャカチャカと鳴らしている。
「なぁ、火、持ってないか?」
おれの存在に気付いた彼は、そう問う。派手な見た目と陽気な性格で、入学から一ヶ月で既に人気者、の地位を確立してる同学年他学科の彼はおれの住むアパートの住人で、更に言えば隣の部屋に住んでいる。
おれは唐突な問いに黙ったままポケットの中に突っ込まれていたマッチを手渡し、彼はサンキュ、と受け取って咥えていたそれに火をつける。「今時マッチってレトロだな」なんて言いながら。
「管楽器やってるのに、タバコ吸うんだ」
門に連なる塀にもたれて立つ彼が背後の石に当たらないよう肩に掛けているのは楽器の形に沿って作られたサックスケース。彼の隣から低くなる塀に腰掛ければ、背中でフェンスが軋む金属音。「たまにはな」と苦笑気味で返事をする彼が吸うものは鮮やかな色の包装がされ、インディアンのマークのロゴが描かれていた。比較的高値なその銘柄にたまに?と心の中でだけ突っ込んで、おれも自分のヴォーグに返されたマッチで火をつける。
「そんなカタギリくんこそ真面目そうな割に意外とワルなんだな」
「ちょっとグレてた頃の名残だよ」
普段ならば別に良いでしょ、とでも返す所が、つい本当の事を口にする。地味に目立たない優等生的立ち位置に居たいおれにとって、隣に立つ一見ヤンキーかチャラ男にしか見えない男は警戒対象なのに、人懐こそうな笑みを浮かべて話しかけてくる彼のペースに乗せられる。
「俺も結構目立つ方だと思うけど、君も結構有名人だよな、先輩が頭抱える位ピアノがめちゃくちゃ上手いカタギリアスカくん」
お隣だし、有名人同士仲良くしようぜ。と手を差し出した彼と、気付いた時にはしっかりと握手をしてしまっていた。他人のペースに乗せられるのは好きじゃ無いのに、彼の作るペースには最早乗せられまくっている。居心地が悪い筈なのに、彼のペースは居心地が良い。
「とりあえず、下の名前は呼ばないで」それだけ言うのが、その時のおれの精一杯だった。


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昨日喫煙所はロマンだと話してたので片桐くんと結城にタバコ吸ってもらった。
片桐くんは結城みたいなタイプは基本苦手だったと思うんだ。できる限り避けておきたいタイプ。それがいつの間にやら親友だよ。人生って何があるかわからんね!

片桐くんはヴォーグ、結城はアメスピ。
お互い自分が育った国にまつわるタバコを吸ってるというのがポイント。ココ、テストに出ます(出ない)



 
| 23:30 | Pianoforte. | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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