Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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チョコレートの箱を開けよ! Ex.01
 
きれいな顔から、キツい言葉。
空気を読んで、あえてヒビを入れる。
アイスピックみたいな奴だなぁ、と思ったのが、第一印象。
 
 
映画センパイとくのりくん
 
 
顔が良いから採用。と当時の上司が言い、俺に引き合わせた青年は、とんでもなく無愛想で、しかし、客商売と言うことは理解しているようで客に対してのみは愛想がとんでもなく良い男だった。
未だに、彼の後輩にあたる女子大生のアルバイトと俺に対してはものすごく無愛想なのだけれど。
彼の名前を、九里楓と言う。
 
ミスをした女子スタッフを客の目がない瞬間にバックヤードへ引っ張り込む手腕は相変わらずで、その後の説教の苛烈さは古参の中でも群を抜いている。その子のミスは致命的なものでもないし、リカバリーも出来ているから哀れな子羊の心がポッキリする前に救出してやらなければ。
俺も、持ち場をそっと交代し、バックヤードを覗いてみれば涙ぐむ子羊ちゃんと、絶対零度の視線で後輩を貫く九里の姿で。あ、コイツただ単に虫の居所悪いな。と長年の付き合いでわかってきた九里の性格に心の中だけでため息。
ていうか、女の子泣かすな。俺のポリシーに反するから。
 
「キュー、そこら辺でやめとけ。やまぐっちゃんも、落ち着いたら戻って」
そうやって助け船を出せば、あからさまにホッとした表情を浮かべその場を逃げ出す山口。あ、それ九里を更に苛立たせるだけ。でもそこまでは面倒見れないわ、自分の蒔いた種はちゃんと刈り取ってな。その後ろ姿を見ながら低い声で「Mother facker」と吐き捨ててる九里を喫煙所へ連れ出す。人でも殺しかねない顔で客の前へ出すわけにはいかないし、どうせそろそろ休憩時間だ。
「きれいな顔してきったねー言葉使うなよなぁ」
喫煙所でタバコに火をつければ、九里をたしなめる。別に英語圏で育ったわけではないらしいが、九里は息をするのと同じような自然さで、英語のスラングを吐き出す。悔しいがしかし、外見が外見でとても自然で。英語を喋る九里は、寧ろネームプレートの九里の文字が邪魔に見える位に欧米人だ。
「それ、聞きあきました」
気だるげに煙を吐き出すのも画になる九里はそうやって俺の言葉を切り捨てた。そう切り捨てられるのは知ってるけれど、やっぱり言っておかなければいけない事は言っておかなければ、と。
「ああでも、丁度良いタイミングで来てくれて有り難かったです」
切り捨てた後にそう続けられれば、首を傾げるしかない。
そんな俺の様子を見て九里は喉で笑いながら続ける。イヤな笑い方だ。
「あのまま続けてたら多分、「何でミズキばっかり!」って逆切れされそうだったし」
更によくわからない。ミズキと言えば、俺の他に九里が態度を硬化させない女子大生アルバイトの名前だ。確か、山口と同じ大学だったか。
「何でそこにコノエちゃんが出てくるんだ」
正直意味が解らなすぎてそう聞き返すしかできない。そんな俺に九里はため息混じりで本当センパイ鈍感代表ですねぇ、と苦笑する。
「僕がコノエと仲良くしてるから。山口、僕狙いみたいだし」
何のことはないように、そう発言する九里に、思わず噎せた。は?誰が?誰を?狙ってるって?
「正直面倒なんですよ、そういうアピール。そんで、アピールに夢中でミスするとかクソですから」
モテる男は違うんですか。俺だったらそんなアピールされたら有頂天だわ。「良い人」止まりでここ数年彼女も居ない俺は、女なんて取っ替え引っ替えですみたいな発言を事も無げに口にする九里をちょっと尊敬のまなざしで見てしまった。でも、ソレ解っててあの態度って、相変わらずお前アイスピックだな。とも思いつつ。
「でも、コノエちゃんとは仲良いよな。アレは何で?」
「コノエとは絶対にそう言うことにならないからですよ。コノエ、センパイ狙いみたいだし」
 
そのさらっと付けたされた一言に。
今度こそ、回復不能レベルで噎せた。
 
 
――――――――――――――――――――
 
 
番外編。
映画センパイは本名を栄花慎(エイガマコト)といいます。
 
| 20:43 | チョコレートの箱を開けよ! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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