Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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君の隣で年越しを。

 高速を走る車内ではカーラジオから第九が流れる。運転席に座る従姉は「コレ聴くとやっぱ年末って感じするよねぇ」と笑う。

「たしかに」

 車窓を流れる景色をぼんやりと眺めながら彼女の言葉に同意をすれば「しっかし、わざわざ良く来るよね。トキ、忙しいんだから年末くらい家でゆっくりしてればよかったのに」と彼女は笑う。そんな言葉に「家に居ても親父に仕事押し付けられるのが関の山だからね」と返せば彼女も納得したように「あぁ……」と同情するような視線を送ってくるのだ。

「それに、浩介さんと長い期間一緒に居られるタイミングを俺が逃すわけないでしょう」

 そう言葉を重ねれば、彼女は「トキって本当に篠原センパイの事好きだよね」と笑うのだ。

 

 それから一時間ほど静音は車を走らせて、彼女自身や浩介さん、弟であるヴィンとそのパートナーである瀬波さんが住む街の中へと入っていく。そして見覚えのある道を車が走っていけば、彼の住む家が見えてくる。広い敷地に建てられた純日本風の平屋建て。垣根の切れ目には瓦屋根の重厚な門があり、その表札には墨痕鮮やかに瀬波と書かれている事を俺は知っている。そして、門の前には一つの人影が見えた。

「浩介さん!」

 車から降りれば、門の前に立つその人の名を声に出して呼びかける。俺の声に気付いた彼は小さく笑みを浮かべ、少し恥ずかしそうに「やぁ」と片手を上げてこちらにひらりと手を振るのだ。

「久々だな、っとぉ」

 彼が言葉を告げれなくなったのは、俺が彼にハグをしたからだ。「浩介さん、会いたかった」そんな言葉と共に彼の頬へキスをひとつ落とせば「お前……っ、そういうとこだけ外国人だよな!」そんな文句も軽く流して「大好きな人に会えて嬉しいんですよ」と思わず上がってしまう口角も隠さずに彼へと告げる。彼は顔を真っ赤にしながら「そりゃぁ俺も嬉しいけどな! それとこれとは……!」と俺の腕の中でもがくのだ。

「会えて嬉しいのはわかるけどさ、門前でいつまでいちゃついてんの?」

 そんな逢瀬に至極楽しそうな声色で水を差すのは弟であるヴィンだ。ニヤニヤしながら半纏を羽織りサンダル履きで門の中から顔を出していた。そんなヴィンの声に浩介さんは肩を震わせたと思えば、ものすごい力で俺を押し返し腕の中から逃げ出すのだ。

「やーい逃げられた」

「誰のせいだよ、誰の」

 揶揄うトーンのヴィンの声に俺は彼の頭をわしゃりと撫でながら突っ込む。そんな俺と彼の会話に恐る恐る浩介さんは「いつから見てたんだ」と訊ねるのだ。

「いつからって、そりゃぁ車の音が聞こえてきてからすぐ出たから最初からだよね」

 そんなに恥ずかしがらなくてもいいのにとケラケラ笑うヴィンに「お前ら兄弟はいっつも……!」と真っ赤な顔で頭を抱えるのだ。

「コースケ諦めなって、どうせそんな事やってても兄貴には可愛く見えちゃうんだから」

「そうそう、可愛い可愛い」

 そんな俺たちの言葉に彼は「こんなおっさん捕まえてかわいいとかお前らもうなんなんだよ!」と吼えるのだ。

 

「で、そこのご両人とヴィンはいつウチに入ってくるんだ?」

「駿馬! いつから……!」

 ヴィンと色違いの半纏を羽織り着流し姿で下駄をカラコロ鳴らして門から顔を出すのはヴィンのパートナーであり、この家の家主の瀬波さんである。悲鳴のような浩介さんの声に瀬波さんは笑いながら「静音がウチ入ってきてからも他の奴らが戻ってこないから様子見に来ただけだよ。静音も紫苑も待ちくたびれてるぞ」と背を向けて再び下駄を鳴らしながら母屋へと続く石畳を戻っていく。

「ま、ずっとここでギャーギャーやってても寒いだけだしね」

 そんな言葉を残してヴィンも門を潜り母屋への道を進んで行くのだ。そんなヴィンの後ろ姿を見送りながら「じゃ、俺らも行こうか」と浩介さんは未だ恥ずかしそうに俺の腕を引っ張るのだ。



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年末のトキササのいちゃつきが書きたかったんです




| 22:47 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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