Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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或いは其れが幸せな日々

​ボクらは宇宙へ続く扉がある街で暮らしている。

 

或いは其れが幸せな日々

 

​「おはよー」
「珍しいな、いつも遅刻ギリギリなのに」
北の大地に作られた広大な敷地を持つ国際宇宙港。その宇宙港に隣接しているのがボクたちが通う国際航空宇宙学院日本校で。いつもホームルームが始まる直前もしくは悠々と遅刻で教室に辿り着くボクは、珍しく余裕を持って教室に入り、見知った友人へと声をかける。机に備え付けの端末を弄りながらのんびりと声を掛けてくる。
「ちょっと面白い情報見つけてね」
昨夜暇つぶしに学校のシステムに侵入したという事は割愛して、ボクは自分の席に座りながらボクの後ろの席に座る友人へ端末越しに「今日、うちのクラスに編入生が来るんだって」と告げる。
「編入生? 普通高校も工業でもうちのカリキュラムと互換性ないのに?」
彼は首を傾げながら疑問を口にする。そう、ボクらが通う高校は宇宙開発に携わる人材を育成することを目的とした学校であり、世界に数拠点あるうちのひとつである。日本の普通教育のカリキュラムとも国際的な高等学校的カリキュラムとも異なる専門教育校で、普通の授業科目は基本的に通信で受けていたり、高卒認定試験をパスするような学校だ。しかも、うちのクラスはそんな中で最も偏差値が高く少人数制の技術者養成コースだ。
「何かね、今までの授業内容をまとめた編入試験で割と点取ったみたいだよ。独学でならすごいよねぇ」
彼の疑問の回答も見つけていたボクは簡単にそう返して笑う。そこまで話したボクに彼は「またハッキングしたろ」と声を潜めため息交じりにボクへ言葉を返す。

「で、ここからが本題なんだけど」
彼の説教が始まる前に無理やり話題を変えるために言葉を挟む「その編入生の名前がタカツカサシュンメなんだよね」と。彼にその名を告げれば、彼はガタリと椅子を鳴らし腰を上げる。そんな物音に他のクラスメイト達は彼へと視線を向ける。そんな彼らに「なんでもないよ」と笑って見せれば、彼らはボクから目を反らし各々がしていた作業や談笑に戻るのだ。基本的にクラスメイト達はボクに関わり合いたくないらしい。このクラスでボクが普通に話す相手は後ろの席に座る友人である篠原浩介くらいだ。
「タカツカサシュンメ、って高師議員の」
「字はそうだったねー」
「駿馬なのか」
「字はそうだった。それに、今までの事を考えればシュンメが来たっておかしくない」
とりあえず、座れば? と彼に告げれば腰を浮かせたままの姿勢を取っていたコースケはゆっくりと椅子に腰を下ろす。ボクらは他の人々よりも少しだけ因縁が深いのだ。こんな事を言ったら更に頭がおかしいと思われることは分かっているから言わないけれど、ボクも、コースケも、何度も何度も同じ人間として生きる事を繰り返していたのだ。宇宙に焦がれた一人の男を生かす為に。この世界に生を受ける前の世界で、やっと男の夢を叶えたと思ったら今回の世界では今までずっと年上で保護者のような存在だったコースケに同じ学年の同じクラスの同級生として再会した。それが去年の入学式の事だった。そうなれば、ボクが何度出逢っても愛し、そして見送っていた年上の彼が同級生になっていたとしてもおかしくはない。コースケの「なんだって、こんな」という掠れるような呟きに何か声を掛けようとした所で、担任が教室に入って来る。

「編入生だ。彼には今までの授業を元にした編入試験をパスしてもらっている。授業は特に戻ったりはしないからそのつもりで」
担任が明けたままの扉の外へ目配せすれば、一人の青年が教室に足を踏み入れる。その姿は泣きそうになるくらい懐かしく、愛しいその人の姿によく似ていた。何度も前の世界で見せてもらった、彼の若い頃の写真と同じ顔をした彼はしかし、ボクが知っている彼とは違う表情を浮かべていた。

「高師駿馬です。よろしくお願いします」

それだけを端的に言った彼は、ボクを見る事もなく担任が指示した席――ボクの隣に座る。連絡事項をいくつか告げた担任が教室を去り、一限が始まる前の短い時間で他のクラスメイトに先んじて彼へと手のひらを差し出す。
「ボクはヴィンツェンツ・フェルマー、よろしくね」
出来る限りにっこりと、愛想よく笑みを浮かべて彼へ声を投げたボクを一瞥した彼は、「仲良しごっこをしに来たわけじゃない」とボクから視線を外す。そうしてボクは知るのだ。彼は『駿馬』ではあるけれど、『シュンメ』ではない事に。

「ヴィン……大丈夫か」
ひそひそと気遣わしげにボクに声を掛けるコースケに精一杯の笑顔を浮かべながら「ダイジョーブ」と小さく返す。それが、この世界のボクと駿馬の出会いであるだけで。彼がこの世界に生きているだけで、ボクは幸せになれるのだから。

 

 

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学パロササセナヴィンもとい廻る世界の最後の世界。

この世界のセナヴィン(タカヴィン?)はここから20年越えの片想いもしくは両片想い期間が始まります(長い)

 

 

| 21:27 | パロ系 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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