Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Let's look at the new world ! : 15

 旅が終わる時というのは、何故こうも感傷的になってしまうんだろう。どうにもセンチメンタルな気分が抜けないままに、私は星空を眺めていた。
「――よし、これであとはコイツに撮り続けてもらうだけ」
 
 首都から車で二時間もかからない場筈なのに、所にあるそこは、街を抜け、連邦道路と呼ばれる幹線道路を走り続けた所にある場所だった。夕飯を何にするかという話をしていたセナくんが唐突に「星を見に行く!」と宣言してからの行動が早かった。ソファに寝転がり何かの論文を読んでいたヴィンがその冊子を投げ出してソファから飛び起き、部屋へと走り出す。セナくんはセナくんで宣言した後にそのまま呆然とする私を残して部屋へと向かうのだ。
「ほら、リツも出掛ける準備して。ジャンバーはヴィンのでいいか」
 奥から声を掛けられた私はやっと、出掛ける準備をするべくその場を離れたのだ。そして、今に至る。
 
 自然公園の中にある、星空保護区と呼ばれているらしいその場所に着くやいなやセナくんは家から持ってきていた三脚とカメラをセッティングし、ヴィンはヴィンで手慣れた手つきでセナくんが運転してきたトゥアレグのバックドアを開けそのままトランクに腰かけてアウトドア用の簡易ガスコンロでポットに入れたミネラルウォーターを沸かす。ヴィンの隣でヴィンから借りたマウンテンジャケットを羽織り、トランクに腰かけていた私は、そんな二人を見ながら、きっとこの二人はこうやって星を見に行くことも多いのだろうとぼんやりと思う。結局は三人でいた所で二人と一人。私はあと数日もすればこの国を去るし、そうなればきっともうこの二人と逢う事もないのだろう、と。頭上に広がる満点の星空を見る事もせずに、そんな事を考えていれば視線を感じた。その視線の元は隣に座っていたヴィンで。
「つまんなかった?」
 首を傾げながらそんな事を私に問うヴィンに、「そんな事はない。ちょっとセンチメンタルになっただけでね」と笑って見せてトランクから腰を上げる。カメラの設定を追えたらしいセナくんは、減光モードにしたスマートフォンを星空に掲げ、現実の星空と画面の中の星空をリンクさせるように空を見つめている。
「星の写真って難しそうだなって思ってたけど、こんな感じなんだ」
 カシャンカシャンと自動的にシャッターを切り続けるカメラを見ながらセナくんに声を掛ければ、「撮るだけなら設定ちゃんとやれば撮れるよ。もうほとんどオートだからさ。あとは構図と、撮る星をどうするかが腕の見せ所ってな」と口端を上げて少年のような笑みを見せる。
「へぇ、私も今度やってみようかな」
「やってみなよ。よくある星が線状になってるのはこうやって何百枚も写真撮ったのを合成するんだ。比較明合成って言うんだけど」
 私の言葉にセナくんはそう言って笑みを深める。「ひかくめいごうせい?」と私が首を傾げれば、「そ、コンポジット撮影とも言うのかな。何枚も写真を撮って明るいのだけ合成してくヤツ。帰ったらこれも合成してみようか」と解説を入れてくれる。西北の方向に向けられたカメラは北斗七星と北極星が光り、左側には天野川が煌く。立っている国が変わっても、輝く星が描く物語は変わらない。デネブ、ベガ、アルタイルが結ぶ三角形位であれば今でも何も見ず、その星空に線を描くことが出来る。
「星図アプリ使うか? 車の中に早見盤もあるけど」
「んー、早見盤にしようかな。あのアナログなのが好き」
 私の答えを聞いたセナくんが「ヴィン! 早見盤もってこっち来いよ」と車に居るヴィンに声を掛ける。「お湯沸いたからコーヒー淹れたら行くよ! リツはコーヒーでいい? 紅茶もあるけど」そんなヴィンの返答に「紅茶でお願い!」と私は返す。
 
「お待たせ」
 ステンレス製のマグを三つと紙製の早見盤を持ったヴィンがセナくんを挟むようにして隣に立つ。「こっちがシュンメので、こっちがリツの」とそれぞれにマグを渡し、私には早見盤を寄越す。私は片手にマグ、もう片方の手に早見盤を持ち、片手でその円盤を回した。隣ではセナくんが赤いセロハンを貼って減光させているライトで私の手元を照らす。
「手つきが慣れてるよな」
 感心するような声色でセナくんはそんな事を呟く。「昔天文指導員のボランティアしてたから」と返せば「やっぱり好きなんだな、星」と笑い声が滲んだ声を投げられる。
「そりゃぁ好きだよ。数字さえ愛せたら私も理系に進んでたんだけどねぇ」
 そう言えば、「そうなってたら、もっと早く会ってたかもしれないな」とセナくんは笑い、「でも、今会えたんだからいいじゃん」とヴィンも笑う。
 
 私の旅も、もうすぐ終わる。そんな感傷を孕んだ笑みを見せる事しか、私に出来る事は無かった。

 

 

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星を見るセナヴィンと笹野が書きたかったのと星の写真を撮らせたかったのだ。

本日はセナさんの誕生日です記念。

 

 

| 20:52 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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