Untitled.短文保管庫。
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チョコレートの箱を開けよ! #07


ただーいま、とリビングのドアを開ければ、今日も相変わらずリビングで何らかの映像を流す楓が居た。

ウチのテレビ、もしかしてアンテナ要らなくね?と密かに思っている事は秘密だ。まぁ、たまにはテレビ番組も見るし。

 

 

そごうサンとくのり君 その3

 

 

って、そんなことに意識を飛ばしている場合じゃなかった。あんなに強い酒何杯も突っ込んだのに殆ど酔っていないというアルコールに強い自分を久々に恨みつつも、少しだけ浮ついた頭の中で楓に何と言おうかとリビングの入り口で悩んでいた。何か糸口は無いか、と楓が見ている映像を確認してみれば、それはまぁ、何と言うことでしょう。お誂え向きだ。と彼のタイミングの良さに感謝した。それは、楓の卒業制作だった。

 

言葉を発しないピアノ弾きと、少年の物語。

 

少年がある日音楽室で出会ったのは、ピアノの前に立つ見知らぬ人間で。慌てて先生を呼ぼうとするも、相手の奏でる音に足を止め、ピアノ弾きと少年の交流が始まるのだ。ピアノ弾きは、言葉を発しない。少年の問いには、音で返す。ピアノ弾きと少年の交流は続く。ある時は音楽室で、ある時は中庭のベンチで、そしてある時は公園のブランコで。ピアノ弾きは外に出るときも楽器を手放さず、何らかの楽器でその意志を少年に伝える。話が進むにつれて、ピアノ弾きの謎が深まりそして、解けていく。ピアノ弾きは、音楽そのものだったのだ。

 

大画面に再生されるその物語は、丁度クライマックスを迎えていた。
ピアノ弾きと少年が最初に出会った音楽室で、ピアノ弾きはグランドピアノの前に陣取り、その隣に少年は立っていた。
「もう、居なくなっちゃうの?」
ピアノ弾きは、少年と決めた肯定の音を出し、少し物悲しいメロディを続ける。
「ぼくも、もっと一緒に居たいのに。何でダメなの?」
幼く真っ直ぐな問いに、悲しげな笑みを浮かべながら、ピアノ弾きは短く悲しい旋律を奏でるのだ。
その悲しい旋律に、なにかを感じ取った少年は、彼にできる精一杯の笑顔を浮かべて、答える
「寂しいけど、寂しくないよ。だって、音楽が近くにあるとき、見えなくてもあなたは僕のそばに居てくれるんでしょう?」

 

そう笑う少年を少し驚いたような顔で見るピアノ弾きは、ふ、と緩やかな微笑みを見せて、優しいメロディを奏でながら消えていった。ピアノ弾きが消えたとも、そのメロディは消えず、どこか悲しい笑顔を見せる少年の姿を映しながらエンドロールを迎えるのだ。

 

 

 

「久しぶりに引っ張りだしてきたんだ、珍しいな」

「うわあああああああ!?」

 

俺の姿を認めていなかったらしい楓に後ろから声をかければ滅多に出さない大声と共にブツリと映像が切られる。あ、エンドロールまで見る派なのに。そんなに恥ずかしかったのか。

「別に良いじゃんか、俺は楓らしくて好きだなーこの作品」

「はっ!?見たの!?」

「ずいぶん前にな。プレイヤーの中に入ったままだったのが、かからささった」
嘘じゃない、偶然見てしまったその作品をついつい見入っていたらエンドロールに楓の名前が出てきて驚いた記憶はまだ、鮮やかに残っている。楓はソファの上であのときか!!と頭を抱えながら叫んでた。あ、これ今のうちに言っといた方が良くない?と未だソファの上で悶絶してる楓に、CDを差し出しながら言う。

 

「そんな九里監督にちょっとお願いがあるんですけどね?」と。

 

――――――――――――――――――――

 

 

九里くんの卒製に出てくるピアノ弾きはその音のツカサさんが演じてます(笑)

地味につながりが出来てるチョコ箱とその音。

 

 

 

 

 

 

 

| 19:35 | チョコレートの箱を開けよ! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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