Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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宴の夜に

​父親であるという男が僕の前に現れて――否、父親であるという男の前に僕と僕の母親が姿を現してから早数ヶ月、僕は彼の家に入り浸っている。
広い日本家屋の中でも大きな部屋である居間の畳の上に寝転んでいれば、「来てたんだ」と襖からひょこりと顔を出すのは姻戚関係にない従兄弟違いであるヴィンだ。正しくは母親の従弟の異母弟である。正直ヴィンとの関係にそんなカテゴリーを嵌めるのは違和感がある。仲のいいオニイサン。それ位が丁度いいのだ。家主どころかこの家に住んでいる人々が居ないうちから渡されている合鍵で入り込み居間で寝転んでいるというのは図々しいのだろうとは思いつつ、在宅で仕事をする母親――静音と家に居るのも億劫でついついこの家の居心地の良さに入り浸ってしまっているのだ。
ヴィンの後ろから僕が通う高校で教師をしている担任の篠原先生と家主であり僕の父である瀬波さんが居間へと入ってくる。
「だってこの家居心地いいんだって。静音は今忙しくしてるから絡まれるの面倒だし」
僕の言葉に生暖かい視線を寄越すのは忙しい時ほど面倒くさい静音を知っているらしい先生と瀬波さんで。ヴィンはきょとんとして彼らと僕を交互に見るのだ。
「アイツ本当変わんないな」
「まぁ、静音の場合は変わったら変わったで薄気味が悪いけど」
瀬波さんと先生はそう言って静音を切り捨てた。
 
「紫苑、泊まっていくんだろ?」
「いや、そろそろ帰ろうと思ってたんだけど」
瀬波さんの言葉に僕はそう答えればあからさまに残念そうな表情を見せる。いつも飄々としているように見えるこの人は、意外と顔に出やすい。
「泊まっていきなよ、帰っても静音が面倒くさいだけだろ?」
担任がそんな事言って良いのかと先生に視線を向ければ「学校には内緒な」と笑う。真面目そうな人なのに、たまにこういう事を言うのはきっと瀬波さんとヴィンの影響なのだろう。「あ、でも静音には言っておけよ? アイツ拗ねると更に面倒くさいから」瀬波さんもそんな言葉を重ね、「今夜はご馳走だからな。静音も来るなら来れば良いよ」と笑うのだ。
 
「じゃぁ、僕は一回家帰って着替え取って静音に言ってきます」
先生にそう告げれば「あ、ボクも行くー」とヴィンが声を上げる。
「静音の所なら歩いてもスグだけど、バイクならチョッパヤだしね!」
「ヴィンのバイク乗せてくれんの?やった」
「あ、それなら着替えてからな。流石に制服でバイクの後ろは見られたら何言われるか分かったもんじゃないぞ」
ヴィンと俺の会話に先生が声を上げる。そう、僕は学校から一度も家に戻らずこの家に来ていた為に、未だ制服を着たままなのだ。
「じゃぁボクの服貸そうか?サイズ変わらないでしょ」
「多分同じ位だよね。背もあんまり変わらないし」
ヴィンの提案に僕も乗る。そうしてヴィンの部屋に向かえば彼の服を着てヴィンのバイクの後ろに乗りやっと我が家へと向かうのだ。

「えっ、何駿馬のトコで夕飯食べて泊ってくんの? 私も行くに決まってるじゃん」
ヴィンのバイクに乗せてもらい自宅に帰って着替えを鞄に詰めながら、仕事中だと思っていた静音に瀬波さんの家に泊まる事を告げればそんな言葉が返ってくる。
「シズネ、仕事忙しいんじゃなかったの?」
ヴィンの言葉に静音は「粗方カタは付いたし、一晩位酒カッ食らって駿馬の飯を食べる位許されると思うんだよね」と笑うのだ。
 
「静音、仕事大丈夫なのか?」
僕は来た時と同じくヴィンのバイクで、静音は静音で自分のバイクを転がし瀬波さんの家に戻れば、僕らの後ろに居た静音にそんな言葉を投げる。
「ヴィンにも言ったけど粗方片付いたからね、全然ヘーキ」
カラリと笑う静音は勝手知ったるとでも言うように玄関を上がり居間へと向かう。
「前日から仕込んでたから思った以上に早く準備出来たな……って静音仕事は?」
料理の乗った大皿を持ち居間に入って来る瀬波さんも同じように静音にそう告げれば「その質問は聞き飽きたわ!」と静音は吠えた。
 
「成程、この豪華な夕飯はコレか」
僕らは手分けして瀬波さんの作った食事を居間へと運び込み、僕以外の大人たちはワインを片手にその夕食をつついている。そんな居間に鎮座する大型かつ薄型のテレビには何年か前に帰還を果たした探査機のドキュメント映画が流れる。そんな映像を見ながら静音は合点がいったようにそんな事を口にするのだ。そんな静音に瀬波さんも「そういうこと」と照れくさそうに笑うのだ。
「コレって、どういう事?」
僕はこの部屋に居る一番まともな大人である先生にそう訊ねる。
「駿馬な、あの探査機が帰還した時「何で俺はウーメラに居ないんだ!!」って叫びながら浴びるほど酒飲んで大号泣して潰れたんだよ。それが丁度7年前の今日なんだよな」
先生のその言葉を聞いて何となく気付く。このイベントは7年前のこの日から、彼らにとって毎年の恒例行事なのだろうという事を。
「ホラ、駿馬って元々宇宙開発オタクな所あるじゃない。やってるのも航空宇宙工学だし」
成程、と僕は頷く。そう言われてみれば静音は原子力、先生も数学教師ではあるものの、瀬波さんと同じ専攻だったという話は聞いたことがある。ヴィンに至っては大学で現役で航空宇宙工学を学んでいる学生の筈だ。この空間の理系密度がおかしい。
「それにしても、静音と駿馬の子供が文系なのは驚いたよね」
僕の妙な表情を察したのか先生がそう言って笑う。そんな先生の言葉に静音も「それね。紫苑の場合どっちもバランスよく出来るって感じだけど。私文系ムリ。ここは駿馬似じゃない?」なんて笑うのだ。
理系科目も得意ではあるけれど、どちらかと言えば文系の科目の方が好きな僕は「そうなんだ?」と瀬波さんに視線を飛ばす。
「まぁな、宇宙が好きなのは大前提だけど、文系科目も得意だったよ」
そう言って照れくさそうに笑う瀬波さんを先生と静音さんは柔らかな笑みを湛えて見つめていた。

そんな2人を僕は何となく見ない振りをして、その笑みの理由を呑みこんだのだ。

7年前に探査機が戻った夜を祝うこの宴は、用意された酒が大人たちに飲みつくされるまで続くのだ。「えっ、何駿馬のトコで夕飯食べて泊ってくんの? 私も行くに決まってるじゃん」
ヴィンのバイクに乗せてもらい自宅に帰って着替えを鞄に詰めながら、仕事中だと思っていた静音に瀬波さんの家に泊まる事を告げればそんな言葉が返ってくる。
「シズネ、仕事忙しいんじゃなかったの?」
ヴィンの言葉に静音は「粗方カタは付いたし、一晩位酒カッ食らって駿馬の飯を食べる位許されると思うんだよね」と笑うのだ。
 
「静音、仕事大丈夫なのか?」
僕は来た時と同じくヴィンのバイクで、静音は静音で自分のバイクを転がし瀬波さんの家に戻れば、僕らの後ろに居た静音にそんな言葉を投げる。
「ヴィンにも言ったけど粗方片付いたからね、全然ヘーキ」
カラリと笑う静音は勝手知ったるとでも言うように玄関を上がり居間へと向かう。
「前日から仕込んでたから思った以上に早く準備出来たな……って静音仕事は?」
料理の乗った大皿を持ち居間に入って来る瀬波さんも同じように静音にそう告げれば「その質問は聞き飽きたわ!」と静音は吠えた。
  
「成程、この豪華な夕飯はコレか」
僕らは手分けして瀬波さんの作った食事を居間へと運び込み、僕以外の大人たちはワインを片手にその夕食をつついている。そんな居間に鎮座する大型かつ薄型のテレビには何年か前に帰還を果たした探査機のドキュメント映画が流れる。そんな映像を見ながら静音は合点がいったようにそんな事を口にするのだ。そんな静音に瀬波さんも「そういうこと」と照れくさそうに笑うのだ。
「コレって、どういう事?」
僕はこの部屋に居る一番まともな大人である先生にそう訊ねる。
「駿馬な、あの探査機が帰還した時「何で俺はウーメラに居ないんだ!!」って叫びながら浴びるほど酒飲んで大号泣して潰れたんだよ。それが丁度7年前の今日なんだよな」
先生のその言葉を聞いて何となく気付く。このイベントは7年前のこの日から、彼らにとって毎年の恒例行事なのだろうという事を。
「ホラ、駿馬って元々宇宙開発オタクな所あるじゃない。やってるのも航空宇宙工学だし」
成程、と僕は頷く。そう言われてみれば静音は原子力、先生も数学教師ではあるものの、瀬波さんと同じ専攻だったという話は聞いたことがある。ヴィンに至っては大学で現役で航空宇宙工学を学んでいる学生の筈だ。この空間の理系密度がおかしい。
「それにしても、静音と駿馬の子供が文系なのは驚いたよね」
僕の妙な表情を察したのか先生がそう言って笑う。そんな先生の言葉に静音も「それね。紫苑の場合どっちもバランスよく出来るって感じだけど。私文系ムリ。ここは駿馬似じゃない?」なんて笑うのだ。
理系科目も得意ではあるけれど、どちらかと言えば文系の科目の方が好きな僕は「そうなんだ?」と瀬波さんに視線を飛ばす。
「まぁな、宇宙が好きなのは大前提だけど、文系科目も得意だったよ」
そう言って照れくさそうに笑う瀬波さんを先生と静音さんは柔らかな笑みを湛えて見つめていた。
 
そんな2人を僕は何となく見ない振りをして、その笑みの理由を呑みこんだのだ。
 
7年前に探査機が戻った夜を祝うこの宴は、用意された酒が大人たちに飲みつくされるまで続いていた。

 

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7回目のはやぶさの日を祝って。

この日はいろんな事を思い出しますね……宇宙開発史はいいぞ……まだまだ浅学なので多くは語れませんが。

ちなみにこれは秘密を明かすに善き日和。の数か月後です。

 

| 21:27 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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