Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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雨上がりの、

「瑞原、今日チャリ?」
部活上がりの剣道場で、雑談を交えながら着替えたり、はたまた逆に雑談に熱中していたりしている中、肩口にぬっと顔を突き出し問うのは、同期の柳原。
「いや、朝雨だったからバス」
「マジで? 最終出てるじゃん」
学校前に止まるバス自体はあれど、私の家の方面へ向かうバスの最終は数十分前に過ぎ去った。そもそも部活をやってその最終に乗るのは無謀に近い時刻設定だ。
「まぁ、20分も歩きゃバス乗れるし」
「瑞原は相変わらず何というか、頼らないよね」
「性格だから仕方ない、って言うかヤナ、お前はなにが言いたいんだ」
言いたい事はハッキリ言え、ハッキリと。とジト目で見やれば、外人のような肩を竦める仕草で笑う。それがサマになるのがまたムカつく。
「送ったげるよ」
「バス停までか」
「いやいや、お宅まで」
「運賃は」
「肉まん一個で手を打とう」
「よし乗った」
「よし、乗っけた」
そうと決まればサッサと帰るのが一番。いつの間にか道場で鬼ごっこを始めていた同期及び先輩後輩にお先に、の一言残し、セーラーの上にマウンテンジャケットを羽織り、ストールを巻く。
「つうか、見てるこっちが寒いわ」
「ホラ俺筋肉あるから」
朝の雨は何処へやら、冷え切ってはいるが気持ちのいい夜道を柳原の漕ぐチャリの後ろに乗りながら、口に出すのは奴の服装に対してだ。
「そういう問題じゃない、あ、コンビニ」
学校から出て一番目に見えるコンビニに止まるかと思いきやそこをスルーして柳原はチャリを漕ぎ続ける。海岸線を走る所為か海風が冷たい。
「瑞原の家の最寄りのトコ着いたら教えて」
「おー……あー」
「んー?」
「星、すごい」
北斗七星、カシオペア、その間の北極星、と片手を離し夜空を指させば、柳原の危ないからという慌てた声。マイペースで穏やかな柳原の慌てた姿なんて見ることが無いから、何故か楽しくなって笑い声が漏れる。
「まさか酔ってないよね?」
「アルコールを摂取した記憶はないな」
「あ、コンビニ」
「あー、そこ最寄りだわ」
「教えろって言っただろ!」
「悪い、忘れてた」
「オイ」
最寄りコンビニにチャリを停め、私は肉まんとピザまんを一つづつ買う。
「待たせた」
「いや全然」
肉まんの方の包みを柳原に渡し、私はピザまんを齧る。
「瑞原は何まん?」
「ピザまん」
「一口頂戴」
答えを聞かずに奴は私の持つそれに噛り付く。柳原だから良しとしよう。そう思っていれば、ん、と差し出される食いさしの肉まん。出されたそれに軽く噛り付く。
「うん、肉まんも美味い」
「瑞原って変り種好きだよね」
「形にはまってるのが嫌いなだけ」
「だからチャンバラだとあんなイキイキしてんのな」
「まぁな」
ダラダラと話しつつ、お互い肉まんだのピザまんだのを齧り続ければ、やがてそれも消化して。
「そろそろ行くかー」
柳原がそう言ってチャリのストッパーをガチャリと上げるのを見、ココで良いよと告げる。
「でも家までって言ったろ」
「ココから一分もかかんないから」
「あ、そ?」
じゃぁこれで。と柳原は来た道を戻ろうと、背中を向ける。その背中を確認してから私もその背中に背を向ける。
「なぁ、瑞原」
背中を向けたまま柳原は私を呼んだ。
「何だ?」
「俺は形にはまってるかな?」
「さてね、でもつまらなくは無い」
そう、詰まらなくは無い。楽しいとはまた違う何かだ。安心感、癒し、ああでもそれは形にはまってるのだろうか。いい表現が浮かばない。
「ただ、お前の後ろに乗ってるのは悪くない」
私の呟いた声は恐らく奴には届かない。きっと私達の関係はこの位の距離感が丁度いいのだ。
 
 
————————————————————
 
高校剣道部な二人。
この子らを軸に色々書きたい欲がある。
  
(tumblrより移植:2013/10/26)

 

| 20:49 | 突発文 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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