Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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Let's look at the new world ! : 13

僕らは朝早くに高速鉄道へと乗り込んで、途中で普通列車へと乗り換える。そうして国境を跨いで旧市街地が世界遺産となっているような街へと降り立った。
 
「一度来てみたかったんだよね、折角だからパリに行く前に寄りたいんだ」
交通手段を決める時に彼女がそう申し出たこの場所は国境近くの街である。
「色々な文化が流入して出来てる街って本当好きなんだよねぇ。あと普通にこのぬいぐるみが昔から欲しかったんです……」
そう言って彼女がしっかりと手に取っているのはこの地域のイメージキャラクターとされているコウノトリのぬいぐるみで。彼女曰く同じ名前を持つ輸送機の打ち上げ中継を見た時に管制室にこのぬいぐるみが置いてあったのだとか。この町のシンボルである大聖堂には目もくれず「セナくんにもお土産で持って行こうかな」なんて僕の父であり彼女の友人となったらしい駿馬の名前を挙げる。確かに、この口ぶりだと彼女と父は話が合いそうだ。結局小ぶりなマスコット数個と、ある程度大きなぬいぐるみを買って満足気な顔で戻ってくる。
 
「いやぁ、興奮してしまって申し訳ない。あ、コレ紫苑くんに。ヴィンとセナくんとお揃い。私も買っちゃったケド」
「いえいえ、面白いものが見れたし」
そう言って渡されたコウノトリのマスコットを受け取りながら、それにしても不思議な人だよな、と思う。列車の中で数時間過ごしていた時も思っていたが、人懐こく笑みを見せてたかと思えば、ふ、と遠い目をして窓の外を眺めている時もある。どこかへ消えてしまうのではないかと思ってしまう程に、どこか遠くを見つめている彼女は一体何を考えていたのだろうか。
そのどこか自暴自棄とも言えるような荒んだ瞳を思わず見てしまった僕には今こうやってはしゃいでいる彼女がどうしようもなく作り物のように見えるのだ。
「ノートルダム寺院には行かなくて良いんですか?」
「えっ、ちょっと待ってノートルダムって此処なの!?」
観光客丸出しできょろきょろと周辺を見回しその風景をカメラに収めていた彼女にそう声を掛ければ、素っ頓狂な声色が返される。
「え、知らなかったんです?」
「フランスとドイツの文化流入してる町って事とコウノトリしか知らなかったデス」
えーそうなんだーそうなのかー、なんて彼女は口にして。
「興味のある事しか頭に入ってない感じ、ヴィンに似てますよね」
「ヴィンとは頭の出来が違うけどね、ヴィンの頭があればもっと楽に生きれた……ってコトも無いか」
ヴィンはヴィンで大変そうだしねぇ。何てことも無く彼女は笑う。
「成程ね」
「なしたの」
「や、何でもないですよ」
きっと彼女のそういう所を、駿馬もヴィンも気に入っているんだろうと思ったのだ。他人を羨む事は簡単でも、その羨むような相手に対して羨む以外の感情を口に出せるのは実は難しい事で。それを彼女はいとも簡単にやってしまうのだろう。
「で、ノートルダム、行きます?」
「そりゃぁ行くに決まってるでしょう」
 
あと美味しいものも食べないとだからね、時間間に合うかな? なんて彼女は行き成り歩き出す。
「笹野さん笹野さん、そっちじゃない」
「やっぱり勘で歩くのは駄目か。紫苑クン、案内よろしく!」
「野生動物か何かですか。離れないでくださいよ」
 
こうして僕らは旅で友誼を深めていくのだ。

 

 

——————————————————

 

 

紫苑くんと笹野の二人旅はパリまで続く。

 

 

| 20:29 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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