Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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今年もあなたの隣で。Part 2

 

隣に立つ男の弟と、学生時代からの付き合いがある同居人兼家主が雑踏に紛れ見えなくなって、俺は何となくあの二人の意図が見えた。
恐らくそこまで気が回っていないのだろう隣の男は屋台をぐるりと一周しても2人を見つけることが出来なくなった辺りで彼らの携帯に電話をかけ、その電話が通じていない事に頭を抱えてその後もう屋台が並ぶ境内を三周した所で心なしかその顔色も青ざめている。新年早々この一回り以上年下の恋人が胃に穴でも開けそうな勢いで右往左往しているのを見ているのは俺の精神衛生上も良くない。
「時嗣、大丈夫か」
「これが!大丈夫に!見えますか!?」
昔はちょっとグレてたらしいけれど、根は真面目で家族想いな彼だ。気が気では無いんだろう。「ちょっと落ち着けよ、アイツらだって2人になりたい時はあるだろ」恐らくどちらかと言えば、1年の中で会う時間が少ない俺たちを2人にさせるべく俺らを撒いたのではあるんだけれど、それを言ったら時嗣が拗ねる。こういう時は言い方ってモンがある訳で。
「もしかしたらまた何かに巻き込まれているかも」とまだ重ねてくる彼に「それじゃぁさ」と努めて明るく笑ってみせながら、言葉を続ける。
「ヴィンにGPS持たせてるだろ。ただバックレるだけならそこまでは落とさないだろうし、そっちを確認してみろよ」
俺の言葉に成程とでも言うようにパッと血色が良くなる時嗣を見て彼に気付かれないように笑みを零す。時嗣は自分の携帯画面と睨めっこをしながらヴィンに持たせているGPSの位置情報を確かめていれば、そのうちその顔はへにょりと呆れたような、困ったような顔になる。
「どうした?」とその手元を覗けば彼のその表情の意味が理解できた。
「全く、アイツららしいな」
俺だって苦笑しか出てこない。地図上にヴィンの位置を示す点がある場所は、繁華街のラブホテルの一つだったのだ。

「全くアイツは慎みってものが無いんですかね!?」
「まぁまぁ、落ち着けよ。相手は駿馬なんだし仕方ねーって」
「あぁもう……」
プリプリしたり項垂れたりとひとり100面相をする時嗣を宥めながらも俺だってこの折角お膳立てしてくれた2人の時間を楽しみたい欲っていうモノはある訳で。普段は時嗣が主導権を握っている関係だからこそたまには年上の意地を見せたいというのもある。
「アイツらがお楽しみ中だっていうのも分かったところで俺らもどっか移動しないか?」
そう言ってやれば時嗣は小さく頷いて。「ドコ行くんです?」と問う。
「そうだな、まずは昼飯食べて折角だし初売りでも見るかね?」
駿馬たちみたいに昼間っからホテルに行くなんて提案は流石に俺からは出来なかった。口から出るのはまずは飯、その後は適当にという何の面白みも無い言ってしまえば1人でもできるような事で。そんな俺の提案を聞けば、時嗣はやっと笑みを見せてそれに同意する。
「明るいうちは健全に過ごしましょう」なんて言って笑う時嗣に、「じゃぁ日が落ちてからも期待するとしますかね」と笑ってやる。
そんな俺を少しだけキョトンとして見つめた時嗣は次の瞬間真っ赤になるのだ。
「浩介さん、そういうの反則ですって……」
真っ赤になりながら、その言葉を絞り出した彼に、俺は思わず噴き出しながら重ねるのだ「俺だって別に聖人君子ではないしな、お前とそういうコトするの嫌いじゃないからなぁ」

願わくば今年も、こうやって偶には時嗣とこんな時間を過ごしたいなんて、年甲斐もなく俺は神に願ったのだ。

 

 

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セナヴィンに撒かれたトキササ。ササハラはたまにトキを弄んでいればいい。

 

 

| 22:42 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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