Untitled.短文保管庫。
最近は殆どがこっちの更新です。

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更に短いもの

 

SS

□突発的に書いたもの
盾と紳士 / 路地裏、喫茶店前にて。 / 灯の揺らめく夜に / ワンダーランドへようこそ! /見えない出口を壊す夜 / ガラスを挟んだ君との距離 // 雨上がりの、 / 星の海を渡れども。 //


□シリーズもの

Pianoforte.
捕まえられない渡り鳥 (鷹晴+片桐)
隠れニコチンの効能 (片桐+結城)
定時連絡:Part.1 (鷹晴+圭佑)
思い返せば青春だった。 (バードランド)

光の輝きをきみと。 (結城x南海)

Étude op.10 nº3 (片ミケ)

※カクヨムへ飛びます

+20バードランド!
昔の話に花を咲かせて (圭子+鷹晴)
もったいない精神の果てに (圭子+ナツミ+茜)
Let's Session!! (片桐+結城)
その秘密は、秘密とすら気づかれない (了馬+夏海)

+20でもPFその時でもない話
想い出の曲をきみと。 (片桐一家)

ながれるほしに、ねがいをかける。(結城夫妻)

バースデーソング (了馬+夏海)


チョコレートの箱を開けよ!
#01:そごうサンとくのり君
#02:くのり君とそごうサン
#03:くのり君とコノエちゃん
#04:そごうサンとくのり君 その2
#05:くのり君と恋心
#06:そごうサンとアキラさん
#07:そごうサンとくのり君 その3
#08:くのり君とアキラさん

チョコ箱番外編
Ex01:映画センパイとくのり君
Ex02:映画センパイとコノエちゃん (1年後)
Ex03:くのりくんと沼について (1年後)
Ex04:くのり君と映画祭 (1年後)


Polaris.
流星群を見に行くササセナ (ササセナ)
死して尚、君を見つめる (幽霊瀬波とヴィン周り)
死して尚、君と出会おう (幽霊セナヴィン)

ながれるほしに、ねがいをかける。(ササセナ)

現パロ:Unser Haus!
#01:瀬波駿馬の場合

Unser Haus!番外編
さいごのよる (ササセナ)
家へ帰ろう。 (ササハラ+ヴィン)
セーラー服と大学生 (ヴィンと友人)
未来に希望を (ササハラ+トキ)
似てない兄弟・似たもの同士 (トキササトキ)
あなたの誕生日を皆で。 (ササセナヴィン)
秘密を明かすに善き日和。 (静音+紫苑+ササセナ以下略)
知っていても、知らなくても。 (ササハラ+瀬波)

今年もあなたの隣で。 (セナヴィン+トキササ)

今年もあなたの隣で。Part2 (トキササ)

恋の薬 (トキササ)

宴の夜に (紫苑+瀬波+ヴィン+篠原+静音)

君の隣で年越しを。 (トキササ+α)

 

いつもとは違う時間軸

とある冬の日の、 (セナヴィン+笹野)


廻る世界編
リフレイン・ワールド (ササセナヴィン)

 

廻る世界のさいごのせかい

或いは其れが幸せな日々(ヴィン+ササハラ+?)


その音を、聞かせて。
00:Alone Again(Naturally)
01:Left Alone
02:All Of Me

番外編
I GOT RHYTHM (ハルナ+ツカサ)
ALL THE WAY (サツキxミナト)
The Wedding (その音xチョコ箱クロスオーバー)


飲んで喚いて呑まれて呑んで。
仕事嫌いと脳内麻薬 (青嗣x宇宙)
バイト君と会社員 (格臣+花宮)
ハイスペック人間の末路 (瑞原+笹野+山崎)
きまずい来訪 (格臣x花宮+笹野)
賢いペットに御褒美を (青嗣x宇宙)
時には心の平穏を (笹野+山崎)
酒は飲んでも飲まれるな! (笹野+舞島+麟)
割れ鍋に綴じ蓋 (笹野+舞島+麟)
ろうそく欲しけりゃ、くれてやる! (笹野姉弟)
未知との遭遇 (笹野家従兄妹連合)
売り場に響いた鐘の音の顛末 (笹野姉弟+山崎+瑞原)
アルコール摂取の効能と副作用 (笹野+宇崎+舞島+麟)
腐れ縁的人間関係。 (笹野+志純)
決意と共に一歩を踏み出せ (笹野+山崎)
狭い世間の容赦なさ (笹野+志純x靖海)
変わっても、変わらない場所。 (青嗣x宇宙)
どうか心にぬくもりを。 (瑞原+笹野(+瀬波))

昇る煙は宇宙へ向かう (瑞原+笹野)

フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン (青嗣x宇宙)

路上へ急襲 (宇宙+肇)

初恋は美しいままに。 (清藤+宇崎)

鍋を煮立たせ冬を討つ (花宮+笹野姉弟)

解禁日の夜に。 (笹野+九里+星+知花)

それはあの頃のままで。 (瑞原)

大晦日の夜に、(宇宙+大漾

残される側の問題点 (山崎+笹野)

花束とチョコレート (笹野+麟+リサ+恂之助)

万馬券にはならずとも (青嗣x宇宙+笹野)

久しい君に逢えたから。(青嗣x宇宙)

ビー・マイ・ラヴにはまだ遠い (藤田+鳴海)

ビー・マイ・ラヴは鳴らされぬ (鳴海+笹野+藤田)

ビー・マイ・ラヴに関する考察 (笹野+九里)

その柏手に込める願いは (笹野+麟)

 

それは青春の日々 (高校時代の笹野達の話)

高校二年 春 (九里+笹野+知花)

高校二年 夏 (知花+星+九里+笹野)

高校二年 秋 (笹野+知花+九里)

高校二年 冬 + α (笹野+星)

 

Those days story (笹野社会人1年目から2年目頃までの話)

疲労回復カロリー食 (笹野+山崎)

恋人たちのはじめの一歩 (鮎瀬x笹野)


Let's look at the new world !(仕事を辞めた笹野の話)
01:そうだ世界を見よう (笹野+格臣+花宮)
02:人類はまだ滅びない (笹野+久慈)
03:ヤニと秘密と告白と (笹野+久慈)
04:その通知音は突然に (トキ+エルマー+ヴェルナー)
05:国際交流はじめました (笹野+トキ+エルマー+ヴェルナー+久慈)
06:彼らの出会いは唐突に (瀬波+笹野)

07:広い世界の世間の狭さ (笹野+瀬波xヴィン)

08:電波の向こうは夜の国 (笹野+舞島)

09:旅路の記憶は甘味と共に (ヴィン+笹野)

10:就職先など投げ飛ばせ (紫苑+瀬波+ヴィン+笹野+エルマー+久慈)

11:真夜中の嗚咽 (笹野+瀬波xヴィン)

12:積み重ねられたもの (エルマーx久慈)

13:彼女に関する僕の考察 (紫苑+笹野)

14:90日間の現実逃避 (笹野+ヴィン+瀬波)

15:旅の終わりに (笹野+瀬波+ヴィン)

16:モラトリアムの終着駅 (笹野+ヴィン+瀬波+エルマー+トキ)

 

Let's look at the new world ! 番外編

EX8.5:その判断は至ってシンプル (舞島+麟+リサ)

EX17 :昨年から翌年へ (セナヴィン+笹野+舞島)NEW!

 

笹野アラフォー以降の話
彼女に纏わる想いの話 (笹野死後・幽霊と周りの人たち)
きみに珈琲を (飲呑xPFクロスオーバー)
ホウレンソウの重要性 (笹野+小河原+部下ズ)


With シリーズ(よその子コラボ)
It Don’t Mean A Thing ‼ (バードランド with ブルースプリング)
夜中の流し (バードランド with ブルースプリング)
お裾分けにも程がある (バードランド with ブルースプリング)


――――――――――――――――――――


Last Up : 2019.01.01



更新の度に上げてきます。
増えれば増えるほど飛びやすくなる筈。
そんなに量が増えるのかっていう疑問は知らない振りで。

 

| 18:32 | 更新履歴 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
昨年から翌年へ

「ホント、急だったよね」
 空港からピックアップしてきた旅先で知り合った友人達を引き連れ師走の街を案内していた私は思わずそんな言葉を口から零した。そんな私の言葉に「何か予定あったんじゃないか?」と少しだけ眉を下げて問うのはセナくんだ。昨夜突然「明日そっちに行くから」というメールを受け取った私は今日の昼の便で新千歳に降り立った彼らと一年ほど振りの再会を果たしていた。
「いや、どうせ堕落した生活してたから「寧ろ外出てめいっぱい遊んでこい」って家から追い出された」
 そう答えればセナくんは苦笑を見せる。きっと、手袋も履かず冷たい空気に晒している左手で光るものに気付いたんだろう。彼はそういう所に目敏いのだ。
「なら、めいっぱい遊ばないと」
 私の言葉に同意を告げるのはセナくんの隣に立つヴィンで。楽しそうに笑う彼の姿にセナくんは優しげに笑みを浮かべて私もついつい口角が上がる。昼間から地元の観光地を引き連れていれば、辺りはすっかり暗くなっていた。イルミネーションが輝く街の中で、二人は暖かな飲み物た入ったカップを手に冷たい風の吹く道を歩いていく。セナくんはコーヒー、ヴィンはココアをそれぞれ口にしながら通りを歩いていれば私の携帯は短いメロディを鳴らすのだ。
「あ、武将からか」
 携帯の通知を見れば、大学時代の同期であり現在は私の夫でもある武将――舞島宗直からのメッセージが届いていた。
「ブショー?」
 口から出ていたらしい私の言葉にヴィンは首を傾げる。そんな彼の問いかけに「あぁ、武将はあだ名。私の旦那」と返せば彼は思わずといったように声を上げる。
「えぇ!? リツ結婚したの? 聞いてないんだけど!」
「言ってないし……でも、セナくんは気付いてたみたいだし」
 驚きを隠さずに言葉を紡ぐヴィンにそう返せば、彼の不満の矛先はセナくんへと向かう。「何でいってくれないの、シュンメ!」叱るような口調でセナくんを非難するヴィンに笑いかけたセナくんは「リツは知られたくないのかなと思って?」と嘯く。
「そもそも言う必要が感じられなかったというか」
 セナくんの言葉に私が補足すれば、ヴィンは信じられないというような視線を私へと向ける。そんな彼の非難するような視線を小さく笑っていなしながら、話題を変えるようにメッセージの内容を口にする。
「ここ数日バタバタしてて、私もすっかり忘れてたんだけど今夜大学時代の仲間とか馴染みと飲む予定だったんだよね、ニューハーフバーなんだけど嫌じゃなきゃ二人も来ない?」
 そんな私の問いに、セナくんもヴィンも告げる答えはイエスである。そんな二人の答えを聞いた私は、メッセージの送り主へと電話を架けた。

 

    ☆ ☆ ☆

 

 すっかり忘れていた大学時代の同期である浅野が営むバーで行われる予定であった年越しパーティーの事を思い出したのは、浅野からの電話で。年末に起こった一連のアレコレを知っている彼は申し訳なさげに俺へと訊ねるのだ。
「今日は来れそうなの?」

 その一連の出来事の渦中に居た張本人はといえば、昨夜突然「去年国外逃亡した時に知り合った友人がこっちに来るらしい」なんて平然と言い放ち、俺はその言葉に家で死にそうな顔をしているよりもマシだろうと彼女を送り出していた。恐らく、彼女自身も年越しパーティーの事をすっかり忘れているのだろう。あれは、衝動的なものだったようだし今日家を出る時はすっかり普通の顔でいつもの口元だけで笑う悪役じみた笑みを浮かべていたから問題はないだろう。浅野からの情報が合っていれば、彼女が衝動的に行ったその行為の引鉄となったとしか思えない男は来ないと言うし、来たとしたら流石に今日は俺も浅野も問答無用で追い出すだろう。念のため、と送ったメッセージは端的に「今夜の飲み、どうする?」とだけ。そんなメッセージを送った直後に携帯が鳴らすのは電話の着信音。通知画面には、愛や恋とは程遠い法律上の契約関係を逆手にとって結婚というラベリングを行った相手――世間一般に対して言う所の妻の名が表示されていた。
 
 普段より少しだけ楽しそうな声色で「参加者二人増えるから、海舟に言っといて」という彼女の言葉がスピーカー越しに俺の耳へと届く。「分かった、現地に来るんだな?」とだけ問えば「そういう事で」と彼女の声が帰って来る。そしてその返答に対する俺の言葉を聞こうともせず彼女はそのまま通話を終えたのだ。
「――あ、麟か。今日は俺ら二人とも参加で、もう二人増えるらしい」
 ツー、という電子音が鳴っていた携帯を操り発進する先は今日のパーティーの主催者である浅野の携帯だ。俺自身把握できていないその情報を浅野へと伝えれば、「とりあえず二人増えた事は分かったわ」という言葉が帰って来る。「――っていうか、あの子大丈夫なの?」心配の色が隠しきれない声色で重ねられた言葉に俺は「分からん」と溜息と共に返した。
 
 そんな会話を交わしたのがかれこれ数時間前の話で。あの会話から数時間後、俺は年越しパーティーが催されている麟の店でカウンターに陣取り水割りを喉に流し込んでいた。店内のテレビでは紅白が流れ、今年も相変わらずコンセプトが行方不明の勢いだけで突き進む尖り切った公営放送で様々な歌手が歌を披露していた。
「年末に奥さんをお借りしちゃってすみませんでした」
 そう言いながら俺の隣に座るのは、リツが連れてきた旅先の知己という男の一人で。一回り以上は年上だろうその男性は確か瀬波と名乗っていたか。彼はビールジョッキをカウンターに置き、スマートな動作で煙草を咥える。役者か何かなのだろうかと思うような男前な容姿の所為か、煙草に火を付けるだけでも絵になる男だった。彼を連れてきた張本人はと言えば、テーブル席の方で他の馴染みの常連やこの店の女の子――性別は皆男なのだが――そして彼女が連れてきた二人の男の片割れである、えらく顔の整った同年代の青年と談笑している。彼女はアルコールで体温が上がったのか、服の袖口を捲っていて。その左手首には包帯が巻き付けられていた。少し乱れ始めていたその布をチラリと見た俺は、頼むからうっとおしいなんて言って包帯を投げ捨てる事はしてくれるなよ。と心の中でだけ彼女へ告げる。そんな俺の目線に気付いた隣の男はどうすればいいのだろうと気遣わしげに俺へと視線を向けていた。
「あぁ、気にしないでください。元々お互いの実家帰るとかそういう事はしないって決めてましたし、寧ろリツも楽しそうだから連れ出してくれて有り難かったですよ」
 そう言って笑ってやれば、男は小さく苦笑を見せながら少しだけ言葉を探すように視線を迷わせ、何かを呑みこむようにビールを呷った。
「俺は、アイツが生きていれば何だっていいんですよ。知らないところで死なれたくないから結婚しただけで」
 初対面の男に対して何を言っているんだろう、と脳味噌のどこかで思いながらも俺はつらつらとそんな言葉を口にする。アルコールによって軽くなった口を留める者はここには居なかった。パーティーの主催であるこの店のママ――浅野は俺と隣の男を見て小さく笑みを浮かべながら注文が飛んできた酒を作り、カウンターへと出来上がったグラスを置いていく。


「あぁ、それは分かる気がする。――愛だね」

 

 そうして男はそう言って、惚れ惚れするような完璧な笑みを見せたのだ。

 

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2018年書き納めかつ2019年書き初めです。

 

2019年に書きたいものの布石を。

セナヴィン笹野と愉快な仲間達は書いてて楽しい。

若干闇が見える気がするけど見えない見えない。

 

| 18:30 | うちの子クロスオーバー | comments(0) | - | posted by 狭山 |
とある冬の日の、

 幼い頃から、ボクはクリスマスが苦手な子供だった。何故かは分からなかったけれど、その頃のボクは普段は家に寄り付こうともしない両親が家にいるという居心地の悪さと母が無駄と断じてしまいたい程に異母兄とボクに差をつけてみせようとしていたからだと思っていた。確かにそれは当時のボクにとって嫌な記憶であったし、居心地が悪い空間だった。最終的に兄――トキは家を出て両親が家を出るまで帰ってこなかったし、ボクはそんな家の中で両親――とりわけ母の期待を感じながら全てを笑顔で取り繕う事が大嫌いだったのだ。けれど、クリスマスが苦手なのはそれだけではないという事をボクはここ数年で何となく感じている。
「どうした?」
 電飾がそこかしこで光り輝く冬の広場でカップ片手にそう声を落とすのはボクよりも頭ひとつ以上背の高いアジア系の男――ボクの恋人で。先ほど彼の手によってボクの手にも握らされているカップは、ほのかに湯気を立てていた。この時期になると恋しくなるグリューワインを片手に寒空の下ボク達は数ヶ月前に越してきたこの街の広場で行われているクリスマスマーケットに訪れていた。ゲブランテマンデルンの香ばしい香りが漂い、人々の活気に溢れるこの場所でぼんやりとしていたボクを気遣うかのようにシュンメはボクに視線を落とし気遣わしげに首を傾げるのだ。「ヴィン、お前この時期やっぱり調子悪いのか?」重ねられた言葉に小さく首を振り、「だいじょうぶ」と返しながらグリューワインを少しだけ啜る。熱せられたアルコールの甘みとスパイスが口の中に広がった。「やっぱり寒いなって思って」言い訳のように言葉を重ねてわざとらしくない程度の笑みを浮かべれば、彼は「去年の冬は日本だったもんな」と笑う。シュンメになら、何を話してもそれを受け止めてくれる事は分かっていたしそれに甘えている自覚もあった。けれど、意味もなくこの時期が苦手な理由を言語化する術をボクは持ち合わせていなかった。
「しっかし、やっぱり本場はすごいな。来年も来ような」
 ま、その前にあと何回かは今年も来たいけど。と笑うシュンメは煌びやかな電飾の中で、一番に輝いていた。そんな彼の言葉に今度は作った笑みではなく、心からの笑みで「そうだね」とボクも笑ったのだ。彼が隣にいるのなら、何も怖くはなかったから。
 
      ☆  ☆
 
 あの冬から、一体何度冬を越えただろう。きっと十にも満たない数だ。この街に住んで幾度目かの冬、あの日を思い出したのはきっと今年も変わらずに輝く広場に足を踏み入れたからだ。広場で行われるクリスマスマーケットは今年も何も変わらずに賑やかさで溢れている。変わったのは、ボクの方だから。去年までボクの隣に立っていた男の姿はどこを探してももう居ない。ボクが認識できる事実は、それだけだった。そして、昔からクリスマスが嫌いだった理由も、ボクは知ってしまった。知りたくなんて、なかったのに。
「ごめん、大丈夫?」
 気遣わしげに声をかける隣の人影は彼のようにボクよりも背の高い男ではなく、ボクの目線と変わらない位の位置から少しだけ気まずそうに視線を投げる。数年前、数ヶ月間だけ交流を持ったその人物は、家族を放ってボクの隣に立って居た。何年も前に数ヶ月間だけこの地で生活し、一度だけ彼女の住む地へボクらが行った。たまにメールのやり取りはして居たけれど、言ってしまえばそれだけの関係だ。けれど、ボクも彼女もそれだけの関係ではなかった。会う事は少なくとも、交流は短くとも、ボクも彼女もきっと互いに互いが最大の理解者である事を心のどこかで知っていたのだから。
「ん、へーきだよ。それより、グリューワイン飲もうよ。で、ゲブランテマンデルン買って家で食べよ?」
 そう言って無理やりに笑みを作れば、聡い彼女はボクの笑みが取り繕った事に気付く。それでも彼女はそれを追求する事はなく笑って「いいね、アーモンドのやつでしょ? 地元のクリスマス市でも売ってて楽しみにしてたな」と返してくれる。数ヶ月前にシュンメが居なくなったという事をボクの同僚であり彼女の親戚である男を通じて最近知ったという彼女は、夫と子供を日本に置いて殆ど身ひとつで十数時間をかけてこの地に降りたった。これが数日前のことで。それから彼女はあくまでも自分が観光をしたいという身勝手をわざとらしく振りかざしてボクを外に連れ出している。それが彼女なりの優しさという事は知っている。彼女は一人でなんでも出来る人だから、本当に観光がしたいのであれば一人であっちこっち見て回るだろう。それに、本当にボクが行きたがらなければ家の中で気ままに過ごしている。ただし、ボクを一人にしないようにしながら。数年前に数ヶ月だけ交流を持って、その後に一度だけ会って、そのほかはたまにメールでのやり取り。あぁ、数年ぶりに顔を合わせたあの夜に一度だけ関係を持った。並べてしまえばそれだけで終わってしまう彼女との関係。それなのに、彼女はボクをシュンメと同じくらいに気かけてくれて、ボクもそれに居心地の悪さを感じる事はない。そんな彼女は今、ボクの――ボクとシュンメの暮らした家で寝起きをしている。彼女との関係をボクは言語化できない。そして、クリスマスが嫌いな理由も、彼女に伝える事は出来なかった。
 それは、喪失感への恐怖だったのだ。シュンメが死んでようやく理解したその感情は、シュンメと出逢う前から確かにあったのだ。それはきっと魂というものがあれば、そこに刻みつけられた恐怖だった。そんな事を言ってもきっと誰も理解はしてくれない。隣でグリューワインを啜る彼女であれば、もしかすると彼女なりにそれを受け止めてくれるかもしれない。「まぁ、そういうこともあるでしょ」と口端だけで笑いながらビールを飲む彼女の姿が脳裏を過る。それでも、やっぱり今のボクには彼女にそれを告げる事は出来なかった。
「ヴィン、せっかくのホットワインが冷めるよ?」
「リツ、早くゲブランテマンデルン食べたいからって急かしてる?」
 今度は気遣う声色ではなく、普段と変わらない声色で彼女の声が投げられる。そんな彼女にボクは不満を滲ませた声色で言葉を返せば、彼女はあっけらかんと「バレたか」と笑うのだ。シュンメが死んでから今まで、面倒くさい同情といらない気遣いの視線と感情に晒されていたボクには彼女のそんな振る舞いが丁度よかった。だから、ボクは冷めてしまったワインを一気に呷り、その言葉を口にしてしまったのだ。


「ねぇ、リツ。お願いがあるんだけど。リツにしか頼む人がいないんだ」
 その言葉は、今の時代に許されるものではない事は知っていた。けれど、ボクはそれを口にした。世界でただ一人の理解者を、共犯者に仕立て上げる言葉を。そんなボクの言葉に、彼女はボクからカップを取り上げて彼女自身が持っていたカップに少し残ったワインを喉へと流し込む。
「じゃぁそのお願いの先払いでアーモンドを大量に買ってもらおうか?」
 彼女の答えはきっと決まっている。そういう人だ。内容も聞かずに遠回しのイエスを聞いたボクは、「それで引き受けてくれるなら。内容聞かなくてもいいの?」と返す。そんなボクの言葉に「ヴィンが死なないなら、何でもいい」と彼女は笑った。

 

 

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来年に向けての布石。

セナヴィンもいいけどヴィンと笹野もよいぞ。

 

 

| 22:04 | Unser Haus! | comments(0) | - | posted by 狭山 |
バースデーソング

「よぉ」
 そう言って高校時代のバンド仲間であり、今をときめくロックバンドのリーダーとなった男は我が家へとやってきた。
 
「よ、リョーマ。久しぶりだなぁ」
 トレードマークの茶髪と赤いメッシュを隠すように被っていた帽子と伊達眼鏡を外しながらリビングに上がった彼は楽しそうな様子も隠す事なくソファですやすやと眠る生まれたばかりの乳幼児を見つめる「この子かぁ」ポツリと呟き赤子に対して愛おしげな笑みを浮かべる彼はソファに座ることはせず、身をかがめたままに赤子を凝視する。その様子がなんだか可笑しくて、笑いながら座る事を勧めれば彼はやっと子供の隣に腰を下ろした。
「あ、お祝いありがとな」
 事前に贈られていたそれに礼を伝えれば「いーよ気にすんなって」と少し照れくさそうに笑うのだ。「あ、コレ明日香ちゃんと食べてよ」と渡される紙袋には有名な洋菓子店の店名が入っていた。「気にしなくていいのに」と笑いながらその袋を受け取れば、キッチンから高校時代の同級生であり妻である明日香が顔を見せる。「あ、リョーマくん久しぶり。こないだはお祝いありがとうねぇ」笑いながらそう告げた言葉に「気にすんなって」と彼は再び照れくさそうに笑うのだ。
「それにしても、子供の名前とか体重とか妙に聞いてくるなと思ったらまさかあんなのが届くとはな」
 そういって揶揄ってやれば「何か驚かせてやりたいって知り合いに相談したら教えてもらったんだよ」となんとも言えない微妙な表情を浮かべて彼自身からの贈り物である棚に飾られたテディベアをちらりと横目で見る。それは体重ベアと言うものらしく、生まれた時の体重を再現したテディベアだった。ご丁寧に出生日時と名前が足の裏に刺繍されたそのテディベアとおむつケーキと呼ばれる紙おむつの詰め合わせが彼からの出産祝いであった。おむつケーキは明日香からのリクエストだったが、それと一緒に大きなテディベアが届いた時は二人で驚き、そして喜んでしまった。子供が大きくなった時に持たせてやろうと、そこまで二人ではしゃいだのはつい数ヶ月前の話だ。パチリ、とソファで寝ていた娘が目を覚まし、リョーマの事をまじまじと不思議なものを見るように見つめる。
 
「よ、初めましてだな」
 楽しそうに笑みを浮かべ赤子の目の前でひらひらと手を振る男が胡散臭かったのか、それとも怖かったのか、見知らぬものをじっと見つめる彼女はふぇ、と声を上げる。人見知りか。泣き出した彼女を抱え上げれば明日香が駆け寄ってくる。俺の腕の中では落ち着かなかったらしい彼女を明日香に渡せば少しだけ泣き声が収まった。娘に振られた俺と娘に泣かれたリョーマは顔を見合わせ苦笑する。「なぁ、ギターあるか?」挑戦的な笑みを浮かべて彼は俺へと問う。「アコギなら」とリビングの端に置いてあるそれを指差せば、彼はソファから腰を上げて「借りるぜ」と不敵な笑みを浮かべてそのネックを掴みポロンと爪弾く。
「お、流石チューニングされてるな」
「どうせ弾くと思ったから用意しておいた」
 リョーマの言葉にそう返せば「分かってらっしゃる」なんて演技がかった調子で口元だけでにやり、と笑う。
 
「半年遅れたけど誕生祝いだ、お前の為に書いたんだぜ」
 明日香に抱かれ落ち着いた娘にそう笑って、彼はそのギターを静かに鳴らし始めた。

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少し短いけど久々にこっちに。

24歳リョーマと0歳のナツミちゃん。

 

| 21:14 | Pianoforte. | comments(0) | - | posted by 狭山 |
その柏手に込める願いは

 呼び出された待ち合わせ場所に向かえば、見知った顔がひとつと、見知らぬ顔がいくつか。様子を見る限りでは恐らく待ち合わせ相手はナンパされているらしい。そんな様子を少し遠くから見ていれば、私に気付いたらしい私を呼び出した張本人はトトト、と小走りでこちらに来て、私の腕にその腕を絡ませた挙句わざとらしく作った声で絡んできていた男たちに宣言するのだ「彼氏来たから、ごめんねぇ」と。
 
「股間にイチモツぶら下げた彼女を作った覚えは無いな」
「失礼ね、アンタそうしてればただのイケメンなんだからナンパ避け位にはなりなさいよね」
 隣に立つ長身の彼女――もしくは彼は、大学時代の同期であり私が入り浸るバーの主である浅野麟太郎である。源氏名は麟、私が学生時代に付けたあだ名は海舟だ。簡単に言ってしまえば隣に立つコイツはニューハーフである。だからと言って女になりたかった訳ではないらしいし、新卒で入社した会社を辞めた時の彼の言葉を借りるのであれば、「自分以外の何かになりたかった」という事らしい。今日も胸元でその存在を主張する豊満な胸は作ったらしいが下半身は未着手だというのはいつだったか聞いたことがある。女言葉でプリプリと怒る海舟は長身とスタイルの良さも相まってモデルかよ、と突っ込みたくなる美人であった。そら、ナンパの一つや二つされるだろうよ。と思ってしまう。頭一つ分背の低い私はと言えば、適当にあった服を着てダブルのライダースジャケットを羽織っているような状況で、服はどれもメンズのものの上全く栄養が届かなかったらしい平らな胸だ。乱雑に伸ばしっぱなしであった髪は先日切ったばっかりで下手すると男よりも短い。だからと言って一応女である私を捕まえて彼氏と言うのはどうかと思うが。
「で、何の呼び出しなんだ。約束は夕方だったろ」
 海舟にそう問いかければ「そうだけど、暇になっちゃったからどうせアンタは何の予定も入れてなさそうだし、初詣と初売り行こうと思って」と悪びれもせずに答える。
「くそ、こちとら夜中まで働いてたんだよ……今日から連休だけどさぁ……」
 思わず出てしまう溜息に、「でも寝てたらメールなんて気付かないでしょ。アンタから返信来なかったら一人で行くつもりだったし」とさらりと言葉を返すのだ。
 
「そういや、今日は武将と三人?」
 諦めて海舟と神宮に向かう道を歩いているうちにふと浮かんだ疑問を口にする。その疑問に海舟は「バニーもよ」と溜息交じりに返事を返す。「げ、ウサギもかよ」思わず口をついて出てきた言葉へ「ご愁傷様」と重ねられる。
「あぁ、これで明日は潰れたな」
「ちょっと、諦めが早すぎるわよ」
 ため息交じりに呟いた言葉に海舟は呆れ声で即座に突っ込む。「もう何年アイツにやられっぱなしだと思ってんだよ。抵抗するのも面倒くさい」そう答えれば「イヤなら抵抗しないとそのままよ」と鋭い言葉が飛んでくる。海舟がバニーと呼び、私がウサギと呼ぶ男は本名を宇崎伊織(ウサキイオリ)と言う。彼は海舟や今夜一緒に飲む予定の武将と共に同じ大学の同じゼミで3年間を過ごした同期である。4年制大学で3年間なのは、単に私が1年間留学していたからである。そして、私とウサギは名目上では付き合っていた関係であり、奴が遠く離れた地に住む今でもこうやって顔を合わせると飲んだついでに致すという完全に割り切られた肉体関係だけがズルズルと続いている。全力でぶちのめせば勝てる相手だとは思うものの、そうするのすら面倒臭く流されるままに流されて今に至っているのだ。そんな事を話していれば、人でごった返す真っ只中にとうちゃくしており、海舟からは「賽銭くらいは奢ってあげるわ」と小銭を渡される。
 
「どうせアンタは流されるんだろうけど、念のため祈っときなさい」
「気休め程度にそうしておくか」
 
 こうして私の年始休暇が幕を開けるのだ。

 

 

——————————————————

 

 

麟さんと笹野の外見男女逆転が描きたかっただけ。

笹野は面倒くさいのもあるけどウサキ氏に手酷くされるのが癖になってると思われる。

言わないけど。

 

 

| 23:37 | 飲んで喚いて呑まれて飲んで。 | comments(0) | - | posted by 狭山 |
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